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第2話「始まり」

 前回からの、あらすじ。

転生バーン!以上!!

 今回は前回よりも少しボリュームが増しました。

これから少しずつ、登場人物も増えていきます。

多分恐らくnavyハッピーエンドなので、そこら辺は安心して読んで下さいね。

 ハインツが前世を思い出してから、既に1週間が経過していた。


 学校での授業は、正直、前世の知識があるハインツにとっては、欠伸が出るほどに簡単な内容であった。

だが、それと同時に、その教育水準が日本と比べても遜色無いものであることに、彼自身、酷く驚いていた。


 ハインツにとって、特に魔導は魅力的だった。

前世には無い分野、ハインツの通うマルク市立尋常小学校ではさわり程度にしか習わなかったが、それでも、ハインツの関心を誘うには十分過ぎるものであった。


 前世を思い出してからのハインツは、学力が大きく向上し、勉学においてメキメキと頭角を現し始めていた。


ハインツ自身、周りと同等の学力に見せようと努力はしていたが、やはり前世で社会人として、義務教育だけでなく高校、大学と履修してしまった以上、限界があったのだ。


 こと魔導や、射撃、社会科に関してはからっきしであったが、ハインツは運動神経も悪く無く、子供の脳味噌は大人としての集中力も合わさり、グングンとそれらの知識や経験を吸収していった。


 しかし、そんな順風満帆な勉学とは裏腹に、これまで円滑であった周囲とのコミュニケーションや、両親との絆には、徐々に暗雲が立ち込めつつあった。


 ハインツは、ハッキリと自覚しつつあった。

噛み合わない、周囲との間に、明らかな価値観の相違がある。


 彼にとって、貴族制や王制というのは、前時代的であり、何れは淘汰されていくべきものだった。

実際、彼から見て、義務教育が充実し、識字率も非常に高いこの国は、十分に民主化の土台が整っているように思えた。


 事実、庶民院という形で民主的な議会も存在するらしいのだ。

どうやら、選挙権は25歳以上かつ大学の卒業資格を有する者に限られるようではあるが…それでも、庶民院という議会がある以上、何故民衆がこれ以上の権利拡大を求めないのか、彼には理解出来無かった。


 そう、少なくともハインツの周辺に於いて、そして、恐らくはこの王国に住む臣民の大半が、熱烈に現在の君主制的な体制を支持しているのである。彼には、全く理解が出来なかった。


何故、大衆はここまで王侯貴族を敬愛しているのか?

何故、教育水準が高いにも関わらず、積極的に国政に関わろうとしないのか?

何故、誰もそれを怠慢と思わず、疑問一つ抱かず支配されることを受け入れているのか?

 それらの疑問は頻繁に彼の脳裏を過ぎり、次第に学友や両親との口喧嘩が頻出するようになっていった。


 そんな中でも、新たに絆を育めた存在も居た。2年上の先輩、ウォルフガングである。

彼は酷く大雑把な性格で、前世で言う脳筋、今世で言うところの、オーガ頭であった。


 しかし、だからこそ、周りとのギャップに思い悩むハインツにとっては、その大雑把な性格が上手く噛み合ったのである。


 彼等は次第に、四六時中一緒に居るようになった。共に弁当を食み、放課後は共に商店街に繰り出した。

試験前にはウォルフガングの勉強に付き添い、分からない所が分からないというウォルフガングに根気強く、時には物理で教え込んだ。

喧嘩したことも一度や二度では無い。それでも一緒に居たのだから、本当に相性が良かったのだろう。


 そうこうしているうちに、数年が経過していた。

ハインツは尋常小学校を卒業し、中等学校も卒業間近となっていた。周囲との軋轢は頻出し、既に嘗ての学友とも絶交状態に陥っている。


 記憶を思い出す前はあれ程仲が良かった両親とも、今や殆ど口を利くことは無い。

父親はハインツを諦めてしまったのか、靴職人としての教育を施す事を辞め、新たに弟子を取ってしまった。


 ハインツの居場所は無く、唯一仲が良かったウォルフガングは軍隊に志願し、軍学校に行ってしまった。


 そして…中等学校を卒業したハインツは、そのような状況に耐えかね、逃げ出そうとしていた。

兼ねてより計画していた事を実行に移すことにしたのである。


 軍学校への入学が決まった時、ウォルフガングはこう言ってくれていた。


 「お前は賢いんだな、俺のお頭じゃあ理解出来ねぇような、難しい事を考えている。

でもさ、俺、お前見てて思うんだよ。

そんなに考えてたら、疲れちまうんじゃないかって。


 だからよ、お前には、軍隊って向いてると思うよ。

何も考えず、ただ魔物をぶっ殺して、人の役に立てば良いんだぜ?最高だろ?


 それに、お前なら、俺じゃあ到底分かんねえ計算も

チョチョイのチョイだろ?砲兵科とかで、敵を吹っ飛ばす…想像しただけでゾクゾクするよな。


 だからさ、ハインツ、お前は嫌かも知んねぇけど、俺は軍隊で、一足先に待ってるからさ、王国軍に入るっていう道も、考えてくれたら嬉しいよ。」


 この言葉がどれほどハインツの心を救ってくれた事か、ウォルフガングが居る場所なら、自分も居ても良いのではないか、そう思えたのだ。


 ウォルフガングを追い、彼自身も軍隊に志願しようと家出をする。

 両親の許可等、取っているような余裕は、反対するであろう両親を説得する気概は、今の彼にはもう、残されていなかった。


 だがしかし、ハインツの内面にも、着実に変化が訪れようとしていた。

ハインツは学校生活を送り、ウォルフガングと共に過ごすうちに、彼から様々な事を学んだ。


この世界における魔物の存在、それに日夜、王国軍や領邦軍が対処しているという事実、そんな彼等ですら敵わない、圧倒的な怪物の存在、そして、この王国が置かれている、危機的状況。


 そんな危機的状況の最前線に居るのは、王侯貴族であり、彼等の圧倒的なリーダーシップにより前線が維持されているということ。


 彼の中で、前世の倫理観や人権意識、常識といったものは、何か未知の存在に舐め取られていくかのように、徐々に、しかし確実に、摩耗しつつあった。

読了頂き誠にありがとうございます。

後書きって、意外と書くの大変なんですね。


マルク市立尋常小学校と、王立マルク中等学校の学校生活は飛ばしました。周囲と価値観の相違に悩む、青少年なんて書いたこと無いですし、想像すら難しいので、書けませんでした。多分グダってエタりますし。


でも、軍学校のパートはある程度描写する予定なので、そこで学園成分を補給して下さい。軍学校なので、殺伐としたムキムキの人ばっかりで、ムサイですがww

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