最終話「マギア・フォレスタル境界戦線」
前回からの、あらすじ。
転生バーン!、周囲との軋轢ドーン!、家出バーン!、試験ドーン!、合格バーン!、再会ドーン!、
衝撃ドーン!、辞令バーン!、初陣ドーン!!、
親友戦死!!!、表彰ドーン!!、境界Go!!、
泡沫、再燃バーン!!
以上!
観測班から、続々と、前線の情報が入ってくる。
「偵察部隊が、第三等級魔物を確認しました!
どうやら、敵はオーガのようです。」
副官たるヴァッフェルが、ハインツに告げる。
ハインツは、即座に指示を出す。
「中隊各位に伝達、敵、オーガと見られる、各砲、爆裂魔導弾の装填、キルゾーン座標、グリッドD-7に諸元設定を行え!」
「ラボール!」
ヴァッフェルもまた、即座に動き出す。
そこに、嘗てのぎこちなさは、既に無かった。
囮部隊が、所定のキルゾーンに、敵を誘導する。
砲兵陣地に、緊張が走る。
それを感じ取ったハインツが、ヴァッフェルに指示を出す。
「中隊各位に伝達せよ。
我等には、王家の加護が付いておられる。
我等を指揮するのは、誰か?それを思い出せ。
貴官等の献身と協力を期待する。」
砲兵陣地より、緊張がきえる。
前線司令部より、大公直々に、砲撃命令が下る。
ハインツは、少しの間、情報を整理すると、砲撃陣地に指令を下す。
「観測より、目標座標、グリッドD-3、西へ50、南へ110!目標、オーガ!
各砲、迅速に諸元設定、初弾装填用意!」
無電により、砲撃陣地に指令が伝達される。
3分もすれば、各陣地から、次々と準備完了が告げられる。
全ての砲兵陣地の準備が完了すると、ハインツの命令を待つばかりになる。
「…全砲、フォイアーユーバーファル、フォイア(効力射、発射)!」
長10.5cm魔導砲が、次々と砲撃を開始する。
観測班より、次々と観測結果が送られてくる。
それに合わせて、修正座標を計算、次々と効力射が放たれる。
そして、とうとう、オーガに砲弾が命中、観測班より、その旨が知らされると、ハインツは即座に口を開く。
「全砲、第25砲兵小隊に諸元合わせ!
ヴィルクザムカイツシーセン(効力射撃)!」
第36砲兵中隊は、長10.5cm魔導砲、10門全てによる全力射撃を開始、一斉に稲光のような砲声を上げ、
魔導弾を射出、秒速950mで弾着し、凄まじい爆風と着弾音で少しの間聴覚に異常が生じる。
そんな中でも砲撃部隊は次弾装填を行い、数分に一度の砲撃を続ける。
砲撃を行う毎にオーガの障壁が弱まり、次第に機関銃弾が通じ始める。
三十分もする頃には、オーガは胸と腹に巨大な穴を空け倒れ伏していた。
大公より、砲撃の終了が命じられる。
こうして、マギア・フォレスタル境界戦線は、一先ずの終結を見せたのである。
ロイエンベルク歴328年、2月15日。
祝勝会も終わり、次の辞令を待つ、第36砲兵中隊、それを率いるハインツは、この日、ランデール辺境伯領の領都「ランデールベルク」に来ていた。
そして、ハインツは、ランデーンベルクにある、高級レストラン「ヒルシュ亭」に到着、その一角にて、フリードリヒ大公の到着を、少し緊張した面持ちで待っていた。
要件は、次の配備先に関する辞令。
本来ならば、ただ、辞令を渡すだけで良い。
それなのに、わざわざ、このような場を設けた事、それは、ハインツが、如何に、フリードリヒ大公から気に入られているかを、如実に表していた。
大公が、レストランに到着。
レストランの人間は、大公の、異質な存在感に気圧され、大公の方をボンヤリと見つめる者、逆に顔を背ける者、瞳を煌めかせ見つめる者、各々が様々な反応を示す中、ハインツは、少し固まっただけで、すぐさま立ち上がり、最敬礼する。
大公は、席に到着すると、答礼し、着席を促す。
「貴官の献身と協力に感謝する。
とは言え、今日は無礼講だ。座り給え。」
「ハッ、ありがとうございます。では、失礼します。」
ハインツは、再び着席し、フリードリヒ大公と向き合う。
暫く、2人は、レバーケーゼに始まり、レバークネーデル・ズッペ、シュペッツレ、そして、ローテ・グリュッツェで締めるという、少し簡易ながらも、ボリューム満点なコース料理を、ピルスナー、白ワイン、ドイツビール、シャンパンといったお酒と共に、舌鼓をうつ。
そして、一頻り食べきった所で、大公が、水で口を湿らせ、口を開く。
「今回、このような席に呼んだのは、知っての通り、君に、伝えたい辞令…というよりも、お願いがあったからだ。」
ハインツは、大公が、自分に、お願いするような事柄が思い浮かばず、内心首を傾げながら、答える。
「辞令…は分かりますが、お願い、とは?」
フリードリヒ大公は、微笑みながら続ける。
「君は、少佐に昇進したくはないか?」
「…は?それは、どういう…」
ハインツは愕然としながら問い返す。
「君の疑問は最もだ。
では、質問を変えよう。ハインツ君、今回、ランデール辺境伯領邦軍を見て、君は、どう思った?」
いつの間にか、フリードリヒ大公の瞳からは、温度が消えていた。
ハインツは、唾を飲み込む。返答を間違えれば、命はない。
そう思えるほどに、恐ろしく威圧的な表情であった。
ハインツは、必死に思考する。
ランデール辺境伯領邦軍。大公の到着前は、壊滅寸前であり、レイエンス参謀は、いとも簡単に命令違反を要求してきた。
しかも、相手にしていたのは、たかだか第三等級魔物。
幾ら火砲が無かったとは言え、あそこまでやられる事は、かなり稀である。
そこから、ハインツは、答えを導き出す。
「…彼等には、王家への忠誠心が、著しく不足している、若しくは、欠如していると思われます。
私が到着した時、前線はひどい状態でした。
大公閣下の指揮により、彼等の士気は回復しましたが、それは、一時的なものでしょう。
曲がりなりにも、栄光ある王家の盾として、ひどく脆弱だと、言わざるを得ません。
彼等は、今回の事で、味を占めてしまった可能性があります。
このままでは、再び第三等級魔物が現れた時、直ぐに王家を頼ろうとするでしょう。
それでは、なんの為に、歴代の国王が、司法権や立法権を委任し、王家の負荷を軽減したのか、分かったものではありません。」
フリードリヒ大公は、満足したように頷き、口を開く。
「その通りだ。では、彼等を、鍛え直すためには、どのような方策が必要だと思う?
因みに、分かっているとは思うが、くれぐれも、王家の威光に頼り切るだけの、屑どもには、なってくれるなよ?」
ハインツは、涼しげに答える。フリードリヒ大公の威圧感は霧散しており、その脅しは、単なる虚仮威しでしか無いことを、確信していた。
「勿論です、閣下。
彼等は、フリードリヒ閣下により、士気を取り戻しましたが、同時に、王国軍の火力に恐怖しても居ました。
彼等を、王家の盾として、真に精強な軍隊とするには、圧倒的な火力に裏付けられた、畏怖による統制が必要不可欠であると、考えます。」
フリードリヒ大公は、再び頷き、ひどく満足気に口を開く。
「私も、全く同意見だ。ハインツ君。
では、私の意思を理解していること、そして、王家への、多くの献身と協力を踏まえ、君を、元帥権限で少佐へ昇進すると共に、特例的に設置される、『ランデール辺境伯特別司令部』の司令官に任命する。」
ハインツは、ひどく驚き、目を見開く。
「な!本気ですか?閣下!」
「勿論、本気だとも。あぁ、そうそう。君の隷下には、第56砲兵中隊、第77砲兵中隊、第63砲兵中隊からなる、第25砲兵大隊、
加えて、第81騎兵大隊、第207歩兵大隊が配属される。
第77砲兵中隊には、第186砲兵小隊も配備されているからな。
好きな者を、司令部に引き抜いてくれたまえ。
これで、君の隷下には、総勢4000名弱、一個連隊規模の兵力が集結するわけだ。
重火器としては、8門の8.8cm野戦魔導砲と、
14門の長10.5cm魔導砲、8門の12.8cm榴弾魔導砲、
更に、数十丁の重機関銃が配備される。
如何なる第2等級魔物であっても、粉砕できるだろう。」
ハインツは、混乱しつつも、思考し続ける。
これを受け入れれば、一階級の昇進に加え、上級将校の仲間入りを果たす。
更には、連隊規模の、強力な兵力を指揮することになり、嘗ての戦友たちとも合流出来る。
ハインツには、参謀会議で、共に向き合う、アデリナと、ヴァッフェルの姿が、脳裏に浮かんでいた。
だが、勿論、デメリットもある。
上級将校となれば、定年は、55歳から、一気に65歳まで跳ね上がる。
また、強力な兵力を率いるということは、それに伴う責任を負うことでもある。
ここまでは、まだ良い。だが、一番の問題は、これを受け入れれば、本格的に、フリードリヒ大公の、勢力下に取り込まれることを意味していた。
だが、それらのデメリットは、ハインツにとって、もはや、大きな問題では、無かった。
ハインツは、暫く、目を瞑り、押し黙った後、目を見開き、口を開く。
「…拝命いたします。改めて、大公閣下と国王陛下へ、忠誠を誓うことを、宣誓すると共に、栄光ある王家の、そして、王国の、盾となり、剣となることを、この場で、誓います。」
フリードリヒ大公は、三度、満足気に頷きながら、応じる。
「貴官の忠誠を受け取ろう。貴官の、陛下と、王家、そして、王国への忠誠は、大陸に轟き、果ては、魔の領域に住まう、怪物共すらも、打ち砕くであろう。」
後に、砲兵英雄と呼ばれ、大陸と、数多の臣民を救う存在が、生まれた瞬間であった。
だが、今の所は、彼は、この異質なる世界に於いて、何処にでも居る、王家へ忠誠を誓い、王家の為に身を捧げようとするような、王国軍人でしか無かった。
〜Fin〜
今回が、最終回となります。
これまで、読了頂き、ありがとうございました。
本作の真の面白さを知るには、前作たる「境界戦線」を読む必要があると思いますので、ぜひ、お読みください。
では、次回作でお会いしましょう。
Lassen Sie uns wieder zu treffen!




