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第一話「目覚め」

これは、現代と異世界の違いと、それを目の当たりにした葛藤を描いた物語。


※読みやすく修正、&加筆しました。間違い探しだぁ


 ロイエンベルク王国、王家直轄地、都市「マルク」

そこそこ現地で有名な靴屋、そこの一室にて、一人の少年がうなされていた。

脳裏には様々な光景が過っている。


 継ぎ目のない石で構成された、ひどく無機質で独創的な建物、最近巷で増え始めているガラスを、ふんだんに使った巨大なビル。


 鉄で出来た凄まじいスピードで走る乗り物。写真でしか見たこと無いような、大量の人々。


 突如として景色が変わる。段々状に椅子が配置されたホール。中央には巨大な黒板があり、そこには謎の数式や図形がビッシリと書き込まれていた。


 いや、少年は確かにそれを見たことがあった。何故ならばそれを理解出来るのだから。少年は全てを思い出す。それと同時に、目が覚める。


 少年は思考する。ここは何処だ?何故自分はここに居る?


 しかし、一先ず少年は、このような状況に陥ったら言ってみたかった事を発言することにした。


 「知らない天井だ」


 ポツリと呟いたその声、変声前の少年のもの、確かに見知った自分の声。

しかし、それと同時に自分の声とは全く違うものだ、とも思う。


 その思考が終わるか終わらないかの内に、再び大量の情報が脳裏に押し寄せる。

情報の本流、先程よりもマシではあるが、途轍も無い情報量に頭が割れそうに痛む。


だが、その痛みは直ぐに止んだ。そして、少年は思い出す。自分の名前は…


 「ハインツ…俺の名前は、ハインツだ。」


 それだけではない。自分が何者なのか、何故ここに居るのか、そして、何故このような状況に陥っているのか、全てを理解する。


 ハインツは、周辺諸国の中では間違いなく最強の国家である、ロイエンベルク王国。そこの、王家直轄地である、都市「マルク」に住む、しがない靴職人の家に産まれた。


 一人目が流産した上での、待望の男子。両親はひどく喜び、目に入れても痛くないほどに可愛がった。実際、ハインツは両親の事が大好きであり、それは、今でも変わらない。


 ここはハインツの為に用意された一室であり、昨夜から熱を出して寝込んでしまっていたのだ。


 そして、ハインツが思い出した、コンクリート建築や高層ビル、乗用車に沢山の人々、そして…大学の講義で受けていた、物理学。


 これらは全て前世の、地球という星の、日本国での光景であり、自分はどうやら、異世界転生と呼ばれるものをしてしまったようであった。


 ハインツは狼狽した。まさかこのような、非現実的な出来事に自身が巻き込まれるとは、前世は勿論のこと、今世ですら想像していなかったからだ。


 宗教戦争以前ならまだしも、この国、いや、この大陸に於いて、輪廻転生等という概念はなく、そもそも宗教自体、土着信仰としてしか存在していない。

転生というものを想像すること等、土台無理な話なのである。


 それでも、何とか現状を把握したハインツは、辛うじて平静を取り戻す。ただでさえ、熱を出して両親を心配させてしまっているのだから、これ以上、心配をかける訳にはいかなかった。


 ふとハインツが耳を澄ますと、一階で物音が聞こえてくる。既に太陽は昇りきり、靴屋は営業時間を迎えていた。ハインツは納得した。だから両親は居なかったのだ、と。


 ハインツの両親は、上流階級向けの靴を作成、販売している老舗の靴屋を経営しており、父親が靴職人と経営を、母親が接客と受注を担当していた。


 ハインツが寝込んだ時、タイミング悪く貴族から発注がかかってしまい、店を休む訳にもいかなかったのである。


 ハインツは、それを理不尽だと感じていた。

子供に時間を掛けることが出来ないというのは、子供にとっても勿論のこと、親にとっても不幸なことであるからだ。


 両親も、前日にハインツに向けて、休めないことを謝罪していた。貴族でなければ休んでいただろうが、相手が貴族である以上、休むわけにはいかない、と。


 とは言え、ハインツはもはや昨日までのハインツとは違う。成人した社会人としての良識も知っている。どうしても休めない仕事、というのは社会に出れば往々にしてあるものなのだ。


 気を取り直したハインツは、一先ず、近くに置かれていたコップを手に取り、水差しから少しぬるくなった水を注ぎ、それを飲んだ。そして、水差しのそばに置かれていた盆から飴を取り出すと、口に含み、身体にエネルギーを補給する。


 体調を整えたハインツは、両親に無事を知らせると、少し遅めの朝食を取り、心配し、休むよう言う両親を宥め、いつも通りに学校へと出発していった。


 だが、しかし、無意識の内に、彼の内側には、貴族に対する反感が根付きつつあった。

それは、幼子としての寂しさから来たのか、それとも、現代人としての、貴族という存在への、半ば条件反射的な嫌悪感から来ているのかは、神のみぞ知るところである。


 現状、確実なのは、それがこれからのハインツの行動に、少なからず影響を与えていることのみである。

読了頂きありがとうございます。このペースで進むと、ちょっとした文庫本くらいの長さになりそうで、戦慄しておりますw。


この作品は境界戦線の世界観を、転生者視点から見た物語となっております。これからもご愛読頂ければ幸いです。

改めまして、読了頂き、誠にありがとう御座いました。

それでは、又、第2話でお会いしましょう。

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