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魂には敬意を払わなくてはならない

作者: 澤西雄二郎

「吉弘はいい子だねぇ」

おばあちゃんの口癖だ

僕「大宮吉弘」は典型的なおばあちゃんっ子で

今でもこうしておばあちゃんと話をしている

産まれてまもなくして,両親は俺を捨てて夜逃げしたらしい

そこでおじいちゃんとおばあちゃんが引き取り、今に至るまですくすくと元気に育った。

特におばあちゃんが大好きだ

今日はおばあちゃんから貰ったお揃いのネックレスをつけて出かけている。

「よぉ!!吉弘」

「久しぶり泰助、元気にしてた?」

「あったりまえよ!!」

元気そうに胸を叩くのは「篠村泰助」中学からの友人だ

「今日はどこへ行くの?」

「ふふっふ…今日は今話題の占いをしてみたいと思います!」

「占いが話題なんだ」

「お前はそういうのに疎いよな…」

「まぁね…」

「まぁ行きますか」

歩きながら話を聞くかぎり、その話題の占い師はこれからおこる未来のことや、自分に取り付いている怨霊などを見ることが出来るらしい

けどそんなこと今の泰助には必要ないんじゃ…

「着いたぜ」

着いたのは小さなビルだった

「ここの地下一階に占い師さんはいる」

「へー」


チーン


「おぉ…」

エレベーターから降りると、目の前にドアがあった

「これだよね?」

「多分…」

「失礼しまーす…」

ゆっくりとドアを開ける

するとそこには椅子と机だけが置かれていた

「誰もいない?」

「いますよ」

「おぉ!」

さっき入ってきたドアから僕らよりも身長の高い男が入ってきた。

「どうぞ,おかけになってください」

「し、失礼します…」

男は僕らの向かいの席に座り、ポケットからマッチを取り出した。

「先にどちらを占えばよろしいでしょうか?」

「じゃ、じゃあ僕から」

先に占ってもらうのは泰助だ

「では始めます、このロウソクの火が制限時間となります、まず今日は何を占って欲しいのですか?」

「今後の運勢と、その…」

「大丈夫です、分かりました」

すると男はポケットから4つのビー玉取り出し、ひとつを覗き込んだ。

「結論から申し上げると最悪です」

「え」

「あなたが二つ目に言おうとしたこともわかりましたが、それも最悪です」

占いって基本的にいいことしか言わないっていう偏見があったのだが、「最悪」なんて言われるなんて…

「な、なんでかはわかるんですか?」

「そうですね……詳しい理由は分かりませんが、あなたのせいではありません、むしろ今の関係はあなたが上手くつなぎ止めているという感じでしょうか…どっちにしろあなたの努力次第でいい方向に持っていくのは無理がありますかね…」

「じゃ、じゃあ最悪を避ける方法ってありますか?」

「あなた諦めが悪いんですね……ないことはないです」

「それって?」

「あなたから縁を切る事です」

縁を切るってそういう話してたの?

「顔に出てますよ、やっぱりかって」

「……」

すると辺りが少し暗くなった。

「これであなたに対する占いは終わりました、最後にひとつ」

「……?」

「ここまで最悪な人は初めてです、それも外的要因で」

どうやら泰助は僕が考える以上のものを背負っているらしい

「では次はあなた」

「僕は特に…あ、おじいちゃんが元気にしてるかって分かります?」

「死者の魂の様子を知りたいと」

「はい」

「申し訳ないですが、それは出来ません」

「え、っなんで?」

「死者の魂と言うのは敬意を払わなくてはいけません、それにあの世での生活を覗くなんて罰当たりですから、申し訳ありません」

確かに…

けどこの人はなんだか信頼出来る

話題になっているのも頷ける。

「ではかわりにあなたの周りの霊を見てみましょう」

「それはいいんですか?」

「えぇ、だって現世にとどまっているのですもの」

原理はともかく、男はビー玉を覗いた。

「…………」

「あの…?」

「あ、あっあすみません……もう一度いいですか?」

「え、えぇ」

なにか引っかかるものでもあるのだろうか?

「泰助さん」

「え、はい」

「こちらのビー玉覗いてみてください」

「俺がみたってしょうがないんじゃ…」

「大丈夫です」

席から立ち上がり、向こう側に座る泰助

ビー玉を覗き込んだ瞬間、泰助が椅子から転げ落ちた。

「大丈夫?」

「ああ…」

とは言っているが額には汗が出ている。

「あなた家族構成は…?」

「生きているのは僕とおばあちゃんでおじいちゃんは亡くなって、両親は知りません」

「そうですか…」

さっきの泰助以上に重苦しい顔をしている

「これをあなたにお伝えするのは心苦しいかもしれませんが、私のモットーですので、お伝えさせていただきます。」

「あなたのお祖母様は既に亡くなられています」






「おばあちゃーん!!」

「はいはい」

「じいちゃんじゃない!」

「おじいちゃんじゃだめ?」

「ハイハイおばあちゃんですよ、お父さんも余計に嫌われますよ?」

「うっ…」

「今日はどうしたの?」

「あのね!ひろきくんに昨日の話したの!そしたら「嘘だー」って言われたの!」

「昨日?」

「飛んでいった風船が戻ってきたんじゃよ、あれはワシも見とったが嘘じゃないぞ」

「けど嘘って決めつけられたんだよね?」

コクリ

「じゃあ自分が納得するまで戦いなさい」

「!?」「?」

「ばあさん、ちと重くないか?」

「いいえ、納得は全てに勝てるの、けどほかの人の意見も聞いて、納得する、そうじゃなきゃただのわがままになってしまうからね」

「どうすればいいの?」

「自分が正しいと思う根拠を押し付けなさい、そして相手の反論も聞き入れるの、見聞の多い子になってほしいもの」





「嘘ですね」

「吉弘…?」

「証拠がありません、おばあちゃんは生きてます」

「そうですか失礼し…」

「お前まだ言ってるのか…」

占い師が折れかけたその時、横から怒号が飛んできた

「いい加減目さませよ!!」

胸ぐらを捕まれた

これおばあちゃんから貰った服なのになぁ

次からはこいつと遊ぶ時はおばあちゃんの服は着てこないようにしないと…

けどどれもおばあちゃんが買ってくれたものだったりするから…

「聞いてんのか!」

うーん

「てめぇのおばあさんの葬儀も行った、病院も行った…」

「お客様!これは…?」

そういやお昼ご飯食べれてるかな…

「占い師さん、あんた正しいよ」

「うぉっ」

胸ぐらから手を離された

考え事をしていたので胸ぐらを掴まされていたのを忘れていた

「あいつのばあさんはとっくに死んでるんだよ」

「死んでない」

「お前…っ!」

「死者の魂はどんな形であれ、あの世へ行かせることが大切なのです!現世におられると様々な怪異が起こるのです!」

「胡散臭いけど今は信じるしかないよな」

なんでみんなしておばあちゃんを否定するんだろう

ねぇおばあちゃん

なんでかな?

やっぱり?

けど泰助置いていく訳にも…

そうだよね

「ちょっ!どこ行くんだよ!」

「え?え?」

「ごめんな占い師さんこれ…」







「ただいま」

「うんただいま」

「ご飯食べれた?」

「そう、じゃあ一緒に食べようか」

「どう?それは良かった」

ちょっと泰助には申し訳ないけど、おばあちゃんの頼みなら断れないよね

親孝行みたいなもんだよね

「けど酷いこと言うよね〜」

「おばあちゃんまだ生きてるのにね……」

「なんか裏でもあるのかな?」

「そうだよね、そんなわけないよね」

「おばあちゃん寝るの?」

「じゃあ布団敷いてくるね」

「僕も寝よっかな〜」







「ん……?」

寝てたのか…


ピロリン


スマホから通知が鳴る

「なんだろ…?」

ニュース速報と書いてある

開くとよく知っている場所の知らない景色が一面に映されていた。

「これって」

今日行った占い師のいるビル……?

ニュースをもう一度見返す

やっぱり同じ場所だ

報道内容では死者は出なかったが、怪我人は大勢いると書いてある

「良かった〜」

いや良くはないんだけどね

泰助はビルからでてたよね?

一応電話かけてみようかな

「……もしもし?」

『なんだよ』

「あぁ良かった〜無事だったんだね」

『それよりお前今どこだよ』

「家だけど……?」

『今からそっち行く』

ブツッ

なんであんなに怒ってたんだろ?

まぁいっか

ゆっくり待っとこ





ピンポーン

「待ってたよ!」

「お前な……」

「どうしたの?なんか怒ってる?」

「怒ってるに決まってるだろ!」

玄関上がってすぐ怒号が飛ぶ

「やめてよ……おばあちゃん寝てるんだし……」

「それだよ……」

「ん?」

「それだよ!おばあちゃんおばあちゃんって!」

「………」

「目覚ませって!おばあちゃんは死んでるだ」

「死んでなんかない」

泰助の言葉を遮る

「じゃあ俺が探してやる」

僕の体を押しのけて家に入っていく

「………死んでなんかない」

泰助もそんなこと言うんだ……

「なんだよ……これ」

泰助が何かを拾いあげる

「それはおばあちゃんの頭だよ」

「頭って…頭蓋骨……」

「そうだよ」

「じゃあこれは?」

「それは手だよ」

「これも全部おばあちゃんの………」

「うん」

泰助の顔がみるみる青くなっていく

僕が一歩進む度、泰助は一歩後ずさりする

「そこは危ないよ」

「は?」


ピンポーン


僕がもう一歩詰め寄ろうとした時、インターホンが鳴った

「はーい」

隣の田村さんだ

「田村さんこんにちは!」

「大宮さんこんにちは……ところでさっき大声がしたんだけど大丈夫?」

「まぁ友達とちょっとあって……」

「あら、仲直り出来るといいわね……おばあちゃんは」

「大丈夫ですよ」

「……そう」

そう言って田村は買い物に行ってしまった。

家に戻ると泰助がいない

「泰助〜」

返事がない

どこに行ったんだろ

窓も空いてない

出て行ったって言う線はないかな

じゃあ尚更どこに……

「おばあちゃんどこいったか知らない?」

「そっかー」

知らないのか……

「おばあちゃんごめんね、起こしちゃったよね」


ギギギ……


ドアの軋む音だ

「泰助?」

ドアの方に向かう

「誰もいない…」


ギャアアアアアァァッァ



振り向くと耳を引き裂くような声が家にこだまする

二階のほうだ

急いで二階に上がる

「おばあちゃん?」

「おばあちゃん、泰助をどうしたの?」

「ねぇ泰助は?」

泰助って言うのかい?

「おばあちゃん……泰助殺したの?」

殺しては無いよ

「じゃあなんで泰助は目を覚まさないの?」

気絶しちゃったんだよ

「ほんとに?」

あぁおばあちゃんを信じてくれるかい?

「もちろん」

ごめんね

「いいんだよ、それより泰助おくってくよ」

頼むよ

「ごめんね泰助」

冷たくなった泰助を抱えて二階を降りる

おばあちゃんの言ってることは正しい

絶対正しいんだ

泰助を含めてこれで7人目だね

ごめんね





【ビル倒壊時のインタビュー(ボツ)】

「あの男のせいだ!あの男のせいに違いない!」

Q、あの男とは?

「今日占いに来た男だ、あの男の祖母の祟りに違いない!」

「やつが死者の魂を蔑ろにするからこんなことが起こるんだ!」

Q、原因は祖母の祟り?

「間違いない!お前達も気をつけろ!祟がいつ起こるか分からないからな!」

あ……

「これダメだな、使えるわけない」

「ですね、けど祖母の祟りなんてあるのかな?」

「んなわけないじゃん」

「だよな」

「そういや俺の親戚の子供が行方不明でさ……」

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