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群青と羨望  作者: 安倍亮太
第一章
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苛立ち・同情

 校舎が風で打たれる音が教室の女子の声でかき消される。高校二年生に進級し、クラスメイトがガラリと変わってはしゃぐ気持ちはわかるが、あと一分でホームルームだ。着席してはどうかと亮平は思う。

 新学期初めてのチャイムが鳴り、ちょうどよく担任の先生が教室に入るや否や、着席するように注意を促す。もう少し真面目に高校生活を送ってはどうかと亮平は思う。しかし、こういう奴らは何を言っても変わらないだろう。

 九時二分になったところで、先生が出席を取り終えたが、一人だけ返事は聞こえてこなかった。野球部の東條翔太だ。一年生ときにクラスメイトではあったが、亮平との会話は記憶しているのは二言くらい。一年生で県大会準々決勝まで駒を進めた野球部のレギュラーであった。東條の性格を言えば規律を守る、そんな性格だ。だからそんな東條が学校に、しかも新学期が始まる日にいないなんてと亮平は意外に思う。

 さらに意外だったのは九時三分になったと同時に登場が慌ただしく教室に入ってきたからだ。何かあって欠席かと思ったが遅刻とは。

 「やる気があるのか!」と怒鳴り声。まあ先生、いいじゃないか。東條は確か鎌倉市からここ横浜市まで自転車で片道大体二時間かけてきているんだし。しかもこの雨でずぶ濡れだ。

 野球部で恐らくは上下関係やらで怒鳴られ慣れている東條でも新しい担任に推されている。

 「顧問の先生にはよく言っておくから席に着くように」

 本当に令和なのだろうか。父が高校生だった頃ならともかく、この時代の叱り方というものはあるだろうと亮平は同情する。

 亮平は高校二年生になっても何かに没頭した経験はない。それに引き換え東條は野球、しかもあと少しで甲子園に行けるというこの高校の野球部のレギュラーだ。きっと無意識の中に没頭という感覚を得ているのだろう。

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