最終回 生きた証
屋上。
私は吸ったこともないタバコの仕草で佇んでみせた。
『似合ってない』
「優等生ですからね」
『なに、興味あるの?』
「ないですよ。グレたいだけです」
そんな私の児戯に、狼奈さんは鼻で笑ったようだった。
「文化祭、大成功でしたね」
『どうかな』
「え?」
『アンタの歌詞を吐き出して、すっごくスッキリした。でも今は、また生きづらさでモヤモヤしてる。いくらゲージが0になっても、アタシの人生なら溜まり続けるんだ』
「それこそが生きづらさ、というわけですね?」
『そうなのかも。まじで最悪』
夕陽をバックに、狼奈さんは黄昏てみせた。
幸の薄い微笑みが夕暮れより寂しくて、悲しくて、切ない。
だけど何より美しい。だからこそままならない。
ああ、私ができることはただ一つ。
「じゃあ一生一緒にいてあげます」
『なにそれプロポーズ?』
「……ふふっ、私たち似たもの同士かもですね」
『どういうこと?』
「なんでもありませーん。と・に・か・く、狼奈さんのモヤモヤを晴らす歌詞を私は書き続けます。だから狼奈さんは吐き出し続けてください。この世界に、生きた証を残し続けましょう。一緒に」
『詩穂……うん、悪くないかも』
「できれば《Hazy Fog》みんなで仲良く吐き出したいですけどね」
『それは気持ち悪い』
「あはははは、もう一生この関係でもいいですね。極まってる」
『はあ、アンタ生きづらいくせに……底抜けにポジティブだね』
「ええ。だってそれが」
私の生きた証なんだから。
これにて完結です!
下の☆☆☆☆☆から評価をいただけると嬉しいです!




