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リミックスライフ  作者: SPECIAL BAY
5/12

『リミックスライフ』 本編 その4

映画の中の世界に戻る。



青町は会社を休んでライブハウスの前にいた。今日は初めてヨルサと行うライブの当日である。そこへヨルサがやってきた。


ヨルサは楽しそうに言った。


「まずは、人を集めましょう!」


人を集めるって簡単に言うがどうやって集めるのだろうか? ヨルサは心配していない様子である。突然、ヨルサはDJコントローラーを取り出し、音楽を流し始めた。街にダンスミュージックが流れる。すると、魔法でも使っているのだろうか、前と同じように音楽に吸い込まれるようにその場にいた人々が踊り始めた。気付けば青町はその音楽に合わせて歌を歌っていた。不思議なことに青町のオリジナルソングをリミックスして流していた。どこで入手したのだろうと思いつつ歌った。とても心地良いリズムとサウンドだった。


ヨルサは踊っている人がたくさん集まったところで音楽を止めた。すると、踊っていた人の何人かがライブのチケットを買い始めた。導かれるように。なぜかこれで客席は埋まったというわけである。なんと楽な人間なんだろうか・・。他のアーティストの積み重ねた努力を嘲笑うような集客である。ヨルサの音楽に取り憑かれたようにライブチケットを買う人のさまはどこかマインドコントロールのようで怖くもある。

いや、最強だ。



ライブが始まった。DJヨルサは、

「みんな、いけるの~~?」

と、観客に呼びかけて場を盛り上げていた。


意外である。あんなに会った時は静かそうな感じだったにも関わらず、まるで別人のようになっている。とても楽しそうである。


DJヨルサは青町にウインクした。


その後、音楽がスタートした。心地良いリズムのダンスミュージックが始まり、観客は誰もが踊り出した。青町も歌を歌い踊っていた。少したって青町は自分がステージ上の人間であることを思い出し、自分が思うアーティストっぽいことをやっていた。なんだか大学時代にライブをしていた頃を思い出すような、それとは違うような感じだった。忘れていたわくわくする気持ちを思い出して心が若返った気がした。楽しいがもっと準備が必要だとも思った。


そうしてユニット初のライブが終わった。



DJヨルサは言った。


「カナト! 楽しかったかな?」


青町はいきなりヨルサが下の名前で呼び始めたので動揺した。

しかし、こう返した。


「ヨルサ、楽しかったよ! でも、もっと練習が必要だった。」


「そうね! 練習はしといて欲しいかな~。向上心だね!」


「向上心って・・。」



その日の夜、青町とヨルサは食事に行った。西洋風の料理店だった。そこでヨルサは急に言った。


「ここのパスタ、おいしい! それと私たち、これから急上昇するから。」


「えっ?」


青町は意味が分からず言った。


「えっ じゃないよ! 私たちはこれからこの国で一番のアーティストになるの。その次は世界? その準備しといて! カナト。」


「えっ?」


驚いてしまった。普通に考えると夢見心地なことを言っている。だがここまで奇妙なことを起こしてきたヨルサのいうことである。

青町は思った。

たぶん、本当であると。


そう考えると少し怖くもなった。


「音楽をできるのは嬉しいがオレ自身には何ができるのだろうか? 全てヨルサの力のおかげだ・・。」


そんな弱気な顔を見せた青町にヨルサは続けて言った。


「これから本格的に音楽活動するから会社を辞めてきて。」


「えっ?」


青町はもはや「えっ?」しか言えなかった。


「心配はいらないよ。私が生み出す音とカナトの想いがマッシュアップされた音楽は誰にも負けないから。ほら、自信を持って、カナト。」


あまりに次々と不思議なことをいうので理解が追いつかなかった。しかし、悩んでもいられずにここはヨルサの洗脳に騙されたと思って弱気な心を払い、会社をやめることにした。



青町は会社をやめた。



同僚の生地丘は驚いていた。それでもやりたいことがあると突き放した。そんな青町を生地丘は笑顔で「頑張れ!」と見送った。もうやるしかない。ヨルサを信じているし、自分の音楽にも自信を持つしかない。覚悟を今こそ持たないといけないのだ。



今日はヨルサとスタジオで練習をする。青町はスタジオ前でギターを抱えて待っていた。そこへヨルサはやって来た。とても派手な服装だった。初めて、ヨルサに会った時のスーツとは違い、とてもカラフルである。


ヨルサは言った。


「会社をやめてきたんだね。もう覚悟は決めたかい?」


青町はそう言われて少し焦ったが、一つ息を吸って言った。


「覚悟は決めているよ。頂点を目指そう!」


そう言った青町は目の色を変えてスタジオでの練習を始めた。この先にある希望を見据えた青町の瞳は輝いていた。



そこからはたくさん歌をつくり、事務所に所属し、メジャーデビューをした。たくさんのイベントに参加し、ライブをし、テレビやラジオに出演した。ヨルサはやっぱり魔法使いだった。ヨルサの魔法にかかれば夢が次々に叶う。人々は僕らの音楽を聴き、それに合わせて踊り、世界が鮮やかに彩られるようであった。



テレビもラジオもSNSも青町とヨルサが生み出したダンスミュージックで溢れていた。毎日、聞かない日がないほど街中で流れていた。有名ダンサーとコラボすれば、誰もがそのダンスを真似した。



久しぶりに電車に乗る機会があった。その時、車内でとある女子高生のスマホがなった。流行りの歌が流れてきた。


と、思ったらそれは僕らの音楽だった。すぐにその歌を止め、女子高生は恥ずかしそうな素振りをしていた。それを見て、ちょっと青町まで恥ずかしい気持ちになってしまった。



高校の時の友達、海老野からはこう言われた。


「やっぱり、お前はすごいやつだ! 文化祭の体育館でオリジナルソングを歌っていた時から才能があると思っていたんだよ。まぁ~、あの計画を考えたオレのおかげでもあるけどな!」



職場の同僚である生地丘からはこう言われた。


「信じていたよ! 青町は絶対に何かを掴む人間なんだと。青町の活躍を見ていると負けてられなく思ったんだ! オレも今から会社を辞めて起業する。覚悟が決まったんだ!」



なんだか、自分でも自分は輝いているんだと思った。というよりも、みんなの応援や期待が青町を輝かせていた。



ヨルサは、SNSで「かわいい! かわいい!」の嵐。「カナトが羨ましい。」なんて声もある。なんだか、ヨルサは出会った時より数倍かわいくなった気がする。時々、着る過激な衣装にびっくりするが、どこか悲しげな感じになる時にドキッとなる。いや、ならない。まだ、全然、ヨルサの謎は解けないままである。



そして、ついに人気が大爆発して、青町とヨルサの「Blue Night City」は5大ドームでライブを行った。青町は夢が叶ったとステージの上で泣いてしまった。たくさんのファンがいて応援してくれて本当に感動した。


ヨルサがいたらとても心強いし、冗談を言い合えるほど仲が良くて楽しいし、不思議な魅力があるしヨルサは本当に最高の音楽のパートナー。出会えてよかった。


・・人生はきっとハッピーエンドになるんだ!



「Blue Night City」



5大ドームツアーが終わり、スタッフのみんなと打ち上げをした。とても祝福のムードで歓喜の涙が溢れた。青町はサポートスタッフの方々にたくさんの感謝の気持ちを伝え、大いに盛り上がった。青町にとって人気者になった今は大変なこともあるが楽しくて刺激のある生活である。こんな生活がずっと続けばいいと思った―





一方、映画館の客席では―


流湾はぱっちり目を見開いて映画を見ていた。流湾はかわいい女優さんが演じる『時軸ヨルサ』が魔法使いのように俳優の影法師が演じる『青町カナト』の夢を叶えていくというストーリーを見て思った。


そんなに簡単に夢が叶うならどれだけ楽なものだろうか。


僕は陽呼子が本気で音楽に向き合う姿を知っている。陽呼子が悩んでいる姿も知っている。



もしも、そんな陽呼子の前に夢を叶える魔法使いみたいな人が現れたなら・・?


陽呼子たちのバンドはどうなるだろうか?

愛する陽呼子たちの音楽は変わらず聴くことができるのだろうか?

変わってしまうだろうか?


もちろん、有名になって欲しい。とても応援している。だけどそばにいて欲しい。そんな気持ちもある。そんな気持ちもあるが、それを裏切ってどこまでも行って欲しいとも思う。


むしろ、僕にとって陽呼子が魔法使いのような存在だ。恋の魔法だけでなく、陽呼子たちの音楽と出会って心の中に自分以外の世界で守りたいもの、応援したいもの、共鳴するものが魔法にかかったように生まれた。それはとても不思議なものであり、奇跡であり、運命であり、これからもずっとそばにあるもののように思っている。



流湾はもう一度、隣に座っている陽呼子の方を見た。やはり暗くて何も見えなかった。

右隣の鮫郎はポップコーンがなくなったことへの諦めがついたみたいで静かに口を開けて座っていた。 (寝ているかもしれない・・。)

佳夏までは見えないが、佳夏も音楽のことを考えているかもしれない。佳夏もテクニカルなベースを演奏するミュージシャンである。もちろん、佳夏のベースの演奏も大好きだ―



(つづく)

読んでくださってありがとうございます!!


次話に続きます!

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