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リミックスライフ  作者: SPECIAL BAY
1/12

『リミックスライフ』 プロローグ

僕はそわそわしていた。


なぜなら、今日、陽呼子ひよこという気になっている女子と映画を見に行くからである。陽呼子の方から珍しく誘われたのだ。陽呼子と二人で映画デートなんて! と心が踊っていた。



僕の名前は流湾るわん。漫画を描くことが好きな大学生。同じ大学に通う陽呼子のことが好き。陽呼子はあまり明るい感じではないが、僕の前ではよく笑う。その僕にだけ見せる純粋な笑顔がかわいくて魅力的。

(「僕にだけ見せる」というのはただの願望だが・・。)



陽呼子は4人組のガールズバンドでギターとボーカルを担当している。歌もつくっている。僕はそんな陽呼子の歌が好き。あの声と歌詞を聴いたら、衝撃が走るように心を掴まれてしまう。ライブの時の陽呼子ははるか遠い存在に感じる。

しかし、友達として話すときはそればかりではない。友達のままではいられない気持ちになる。自分でもはっきりと分かるくらいに恋をしている。想いを伝えられずにいる苦しみを抱え、意気地なしの自分が嫌になる。

今日はそんな陽呼子からの映画のお誘いだ。タイミングがあれば、この想いを伝えたいと思っている。昨日はそんな緊張と興奮であまり眠れなかった。僕の睡眠の時間まで奪ってしまうなんて! 陽呼子の存在はちょっとずるく感じる。映画をみながら寝てしまったら、それは全部、陽呼子のせいだ。

そんなことを思いながら歩いていた。



陽呼子との待ち合わせの駅にやって来た。よく待ち合わせに使う僕たちが住む街の駅である。この駅前には大きなバスのロータリーがある。人が少なく、ただのんびりとした雰囲気の広い場所である。休日のバスが優しい朝日を反射しながら出発していた。集合時間より早く着いたので僕は陽呼子が来るまでここで待つことにした。



陽呼子を待って何分か経過した。5分くらいだろうか。まだ待ち合わせの時刻ではない。しかし、そこに誰かが歩み寄って来るような気配を感じた。一瞬、陽呼子が来たのかなと思ったが、どうも陽呼子が来たようではない。陽呼子とは違う感じの変な空気が徐々に近づいてきている。


誰だろう?


さっきまで穏やかで心地良い緊張感のある雰囲気に包まれていたのに、騒がしいファミレスでドリンクバーを飲んでいるような緊張感のない雰囲気が迫って来ていた。



この感じ・・。もしかして・・。あいつじゃないか・・。



心当たりがあった。それは陽呼子よりもどこか繊細さに欠ける人物である。たぶん陽呼子よりもバカっぽくっておかしな男性である。もしそうだとしたら嫌である。そう思いながら恐る恐る後ろを振り向いた。



そこにいたのは・・。



「おはっ! 流湾! 今日は快晴だな! 雲一つない映画日和だ!」


終わったー。



そこにいたのは、予想通りの人物だった。同じ絵画サークルの友達である鮫郎さめろうだった。

厄介だ。

こいつはとてもバカなやつで意味不明なことを言ってはクレーンゲームばかりやっているような人間である。この前は陽呼子と2人で海辺へデートに行く予定をたてていたのに、なぜかデートに参加してきて邪魔をされたのだ。いつも、陽呼子と二人になりたいと考えている時には鮫郎が現れる。優しくて良いやつで鮫郎はいつも一緒に遊んでいる親友だが、現れないでいい時にも現れる。特に今日だけは陽呼子と2人で映画を見に行く大事な日だ。

だから現れないでくれ・・。



「おう! 流湾。なんだか、深刻そうな顔をしているな。悩みごとがあるなら相談にのるよ!」


「全部、鮫郎のせいだ!」


「オレ?」


鮫郎は急に犯人扱いされたようなことを言われて両手をあげて驚いていた。僕は心の声が出てしまったので、慌てて鮫郎に言った。


「あっ・・。いや、なんでもない。冗談だよ。」


「なんだ、冗談か~。安心した! てっきりこの前、流湾と一緒にポテトチップスを食べた時、9割近くをオレが食べたことを恨んでいるのかと思った!」


「そんなこと、恨んでないよ!」


「なら、良かった!」


鮫郎は大袈裟に安心した顔をしていた。




「流湾くん、鮫郎くん、おはよう!」


そこにそっと穏やかな風が吹き抜けた。

カーテンから柔らかな朝日が溢れてくるような声である。

それは正真正銘、陽呼子の声である。その声を聞いて少し緊張をした。


「おはっ! 陽呼子ちゃん!」


鮫郎は元気よく陽呼子に挨拶する。僕も慌てて陽呼子の方を見て挨拶した。


「陽呼子、おはよう! 今日はいい天気だね。」


陽呼子の方を見ると今日もお気に入りの黄色い服を着ていた。そのヒヨコのような服が太陽の光に照らされてピカピカと輝いている。

眩しい!

もはや、陽呼子が太陽である!



そんなことを思いつつ、陽呼子に確認として聞いた。


「陽呼子、今日は陽呼子がみたいっていう映画を見に行くんだよね。今日は鮫郎も誘ったの?」


すると、陽呼子は当然のように言った。


「そうだよ! あと、佳夏かなつちゃんも誘った。この前、4人で海辺の街に遊びに行ったよね。その時、楽しかったから、また行きたいなぁって思ったの! 映画はちょっと見たい映画があって・・。いいよね? それに流湾くんと2人きりじゃ、ちょっとね・・。」


「そうなんだ・・。」


僕の返答は口ごもってしまった。陽呼子が何気なく言った言葉が気になったのだ。

それは「流湾くんと2人きりじゃ、ちょっとね・・。」という言葉である。

どういう意味だろうか。

僕と2人きりが嫌だってことだろうか?

それとも2人でいると落ち着けないってことだろうか?

それとも陽呼子も僕のことを意識しているのだろうか?

もしかして陽呼子も僕のことが・・。




「好き!」


「え?」


「オレはジンベエザメが好きだ! だから、ジンベエザメのキャラが活躍する映画、『BAY AREA FANTASY the MOVIE』(ベイエリアファンタジー・ザ・ムービー)が見たい! でも、今日は陽呼子ちゃんが他の映画を見たいっていうからそっちの映画を見よう! オレも陽呼子ちゃんがみたいっていう映画、気になってきた!」


鮫郎は高らかに宣言していた。紛らわしい。



ところで鮫郎の話に出てきた『BAY AREA FANTASY the MOVIE』 とは、ジンベエザメのキャラがペンギンに会うために冒険に出ていく映画である。最後にジンベエザメとペンギンが一緒に踊るダンスがかわいいと人気である。実は僕もそちらの映画が見たい。

しかし、陽呼子は『リミックスライフ』という聞いたこともないような映画を見たいらしい。どうも、主人公とDJの女性の物語らしい。面白いのかは分からない。なぜ、陽呼子がその映画を見たいのかも分からない。しかし、陽呼子が見たいという映画だから見に行くのだ。陽呼子が見たいと言えば見に行くし、陽呼子がしたいと言えばするし、陽呼子が欲しいと言えばあげる。

陽呼子の言うことは絶対だ! どんな時も絶対だ!


・・絶対? なんか怖い!

陽呼子、なんか怖いよ~!



「流湾、なんでにやけているんだ?」


「にやけてなんかない!」


慌てて強く言った。

鮫郎に陽呼子のことを妄想してにやけているところを見られてしまって恥ずかしくなった。

いや、本当ににやけてなんかない!

そんな僕に鮫郎は言った。


「分かるよ! その気持ち。今日はクレーンゲームができるから楽しみなんだろう? 何が獲れるんだろうって! そう想像するとにやけてしまうよな! 今日は絶対、いいのをゲットするぞ!」


鮫郎はまた的外れなバカなことを言っていた。


「あ~~。・・そうだね。でも鮫郎。今日はクレーンゲームがメインじゃなくて、映画を見に行くのがメインだぞ。なんだか勘違いしていないか~? それに僕は鮫郎と違ってそんなにクレーンゲームに興味ないぞ! 鮫郎、そんなことを言っていたら、全然、ゲットできなくて、一個、800円を使った高級飴を舐めることになるぞ~。」


僕は笑いながら言った。その言葉を聞いて、鮫郎は不思議そうな顔をして言った。


「分かっているよ~。今日は大丈夫だよ~。」



そこへ陽呼子の友達である佳夏がやって来た。待ち合わせ時間の3分後である。綺麗な青空に負けないくらいの爽やかな笑顔で優雅な登場である。


佳夏は陽呼子と同じバンドのメンバーでベースを担当している同じ大学の女子。美人。ファンが多いらしく男子に囲まれていることも多い。きっとたくさんの男子にモテていると思われる。しかし、遊びまわっているという話は聞かない。僕たちと会うことがほとんどで、あまり友達が多いわけでもないらしい。僕は他の人より佳夏と一緒に話すことが多いので、周りの男子からは佳夏を狙っているんじゃないかと言われることもある。

しかし、決してそうでない。

佳夏はとても美人だし、性格も悪くないので好きになってもおかしくない。だが、恋愛的に好きという気持ちを感じない。友達って感じだけである。


それはきっと陽呼子のことが好きだからだ。


・・ここでは話さないが僕と陽呼子は奇跡的な出会いをした。それは冬の優しい太陽が僕らを包み込むような出会いである。その陽呼子との奇跡の出会いをお守りのように握っている。

もしかしたら、陽呼子も同じお守りを握っているんじゃないかと願いながら・・。




「流湾くん、サメくん、陽呼子ちゃん、おはよう! ぎりぎりセーフだね!」


「アウトだよ。佳夏ちゃん。」


アニメのヒロインみたいな仕草をしている佳夏に陽呼子はわざと暗い声で言った。


「陽呼子ちゃん、怖いよ~。もう~。 ほぼ時間通りじゃん~。みんな、まじめすぎ~。 陽呼子ちゃんも流湾くんもサメくんも。」


その佳夏の言葉に鮫郎が反応した。


「やっぱりな~。オレはまじめなんだよな~。すごくまじめ! 今日、オレはまじめにクレーンゲームをしようと思っているんだ。どう? 佳夏ちゃんも一緒にクレーンゲームする?」


また鮫郎が変なことを言っている。

佳夏はその変な言葉に少し驚きつつ、子どものように返した。


「する! する! 絶対したい! 偶然だ! サメくん、ねぇ~聞いて! 本当に偶然なんだけど、今日、クレーンゲームをする夢を見たの! それが本当にすごい夢だったの! 」


「どんな夢?」


「それはね。子どもの頃欲しかった魔法少女のフィギュアをゲットする夢! 私はゲームセンターで魔法少女のフィギュアのクレーンゲームを発見して、それに挑戦したの!」


「それで、それで。」


佳夏が突然始めた今朝見た夢の話に鮫郎は興味津々になっていた。



「それでね。よし、獲るぞ! と思ってそのクレーンゲームに挑戦したの。

そしたら、なぜか私の横に子どもの頃の私がいた!

子どもの頃の私がそのフィギュアを欲しそうな顔で『とって! とって!』って私に言っていたの!

だからなんとしても獲ってあげようって気持ちになった。

でも全然獲れなくて。

獲れないまま、あと残り、100円って展開になったの。

最後の一回。

私は絶対に獲ろうと思って挑んだの!


すると、そこで不思議なことが起きた!


景品を掴むアームの強さがめちゃくちゃ強くなって、これまでにないくらいがっちりと箱を掴んだの!

これで獲れると思った!

これは大チャンスだなって。

そこまでは良かったんだけど・・。

そこからもっと奇妙なことが起きたの。


そのまま、アームの力がさらに強くなってフィギュアの箱を握りつぶした。

そして中身のフィギュアもバキバキに壊してしまったの!

びっくりした! それはもう爆発したみたい・・。

クレーンゲームのガラスの向こうで魔法少女のフィギュアが粉々になっていたの・・。


その残酷な状況に泣き叫ぶ幼い頃の私。

まさしく、それは地獄だった。

そのありえない事態に悲しくて私も泣いちゃった・・。

どうしてこうなっちゃったの・・って。


2人の泣き声が響く中、そこに救世主が現れたの!

それは本当に素敵な救世主!

そこに現れたのはあの伝説のアイドルグループ『陸風』の春葉(はるば)くんだったの!

いきなりの憧れのアイドルの登場に声を出して驚いちゃった!

あまりにかっこよくて、雰囲気も良くて、尊くて私は死にそうだった!


その春葉くんがまさかのそのゲームセンターの店員をしていて、こう言ったの。


『とても悲しいから、魔法少女のフィギュアは獲れたことにして、新品を差し上げましょう。』って!!


感激じゃない!! 神のように優し過ぎる!! やっぱり、春葉くんはイケメン!!

そうして、私は子どもの頃の自分に魔法少女のフィギュアをプレゼントすることができたの!

子どもの頃の私は大喜び! 私も大喜び!

あの『陸風』の春葉くんに会えたし、魔法少女のフィギュアもゲットできた。

本当に最高な日だ! って思っている時に目が覚めたの!

最高にすごい夢だった! あれが現実だったらなぁ~。」


佳夏は思い出して興奮したように話していた。小さくジャンプしている。



そんなテンションの高い佳夏の夢話に鮫郎も興奮しつつも冷静に言った。


「それはすごい夢だな!! それこそ、映画化できそう!

・・でも、一つだけ悲しいポイントがあるんだ。


それは・・。


それは自分の力で魔法少女のフィギュアを獲ることができなかったこと。

子どもの頃の自分にはきちんと自分の力で獲ったフィギュアを渡したかったよね。

どんなに頑張って生きても、掴めないものもある。

お金には限りがあるし、運もある・・。

でも、本当に大切なものはきちんと掴んで生きているんだぜという姿は昔の自分に見せたいよな~。」


鮫郎は真剣な顔をして言った。

その言葉に佳夏も真剣な顔で返した。


「そっか・・。そこまでは考えていなかった。

『陸風』の春葉くんに会えただけで喜んじゃっていた。

もっと自分の力で掴むことが大切だったんだ・・。」


佳夏は反省していた。

鮫郎はそんな佳夏を見て言った。


「佳夏ちゃん、でも憧れのアイドルに会えた夢は大切な宝物だよ~。

子どもの頃の佳夏ちゃんも喜んでいると思う。

それに今日、クレーンゲームができるから、そこでゲットしようぜ!

オレもすごいのをゲットするぜ!」


その言葉に佳夏はテンションを取り戻した。


「ありがとう! サメくん。そうだよね! 今日はゲットできるように頑張ろう!!」


「おう!」




佳夏と鮫郎の間でおかしな会話が繰り広げられた。逆に深い話にさえ感じる。


「どうしたら、佳夏はそんな変な夢を見られるんだ? アームの強さが変わって、フィギュアの箱を粉砕? どんな状況だよ! 怪力アーム過ぎるだろう! それに鮫郎の深いことを言ってそうで中身のないクレーンゲーム哲学は何なんだよ! それを聞いて、納得する佳夏はもっと意味が分からない。本当、変な人たちが集まったものだ。こんな楽しい友達ができて改めて嬉しい!」



陽呼子は違うところに反応して言った。


「佳夏ちゃんも『陸風』の春葉くんが好きだったの? 実は私も好きなの! 春葉くん。本当かっこいいよね。グループは活動を休止しているけど、結構今でも春葉くんが出ているテレビ番組とか見ている~。」


陽呼子の話を聞いて、佳夏は驚いたように言った。


「陽呼子ちゃんも春葉くんのことが好きだったんだ! 初耳~!」


僕もその話は初耳である。陽呼子に好きなアイドルがいると聞いて少し考えてしまった。


「陽呼子は春葉くんが好きなのか・・。アイドルを好きになるのは普通のことだけど。陽呼子もイケメンが好きだと思うと・・なんだか・・僕みたいな・・。イケメンじゃない僕なんか・・。

いやいや、弱気になってはいけないな! 僕は誰よりも陽呼子に似合っている人間だ!

そう! 絶対に! 今日こそは・・。」



そんなことを考えていると電車の時間が近づいていた。今日は陽呼子と二人でデートというわけではないが、陽呼子と過ごす大切な時間である。陽呼子の心を必ず射止める! ことはできなくてもいいから、楽しい時間を過ごしたい!



4人はホームで話しながら電車を待った。




「まもなく、3番線に電車がまいります。」



「この電車に乗るよ!」


陽呼子は言った。


「了解!」


そこへ電車がやって来た。この電車は海沿いの方へ走る電車である。途中の景色はとても美しい。まるで海の中を走っているような感覚にもなる路線である。今日は快晴なのでいい景色が見られそうである。ホームでは電車が巻き起こした風が少しだけ陽呼子の髪をなびかせていた。陽呼子は線路の横で揺れている花を見ている。僕はそんな陽呼子を見ていた。




電車は良く晴れた青空の下、海岸線を走り抜けていた。予想通り、美しい景色である。心地良い電車のリズムと輝く波のダンスに揺られていた。そして4人は目的地のベイサイド駅に到着した。



「着いたね~!」


佳夏は嬉しそうに言った。


そこからおしゃれな海辺の通りを歩き、映画館のあるショッピングモールへ向かった。



「先にお昼を食べようか!」


陽呼子は言った。


「そうしよ! ここのフードコートで何か好きなものを食べようよ! 朝ご飯、食べてないの~。お腹がすいたよ~。」


佳夏は子どものようにジタバタしてお腹がすいたことをアピールしていた。



ここはスーパーマーケットやアパレルショップ、雑貨、映画館、ゲームセンターなどが入った大型ショッピングモールである。入った瞬間、広告を流す大きなビジョンが目に入る。きらびやかでにぎやかである。僕らはその空調の効いた広くて鮮やかなフロアを歩いていた。


最初に目指すのはフードコートである。ブランド品が売ってあるお店の横を通り、楽器屋の横を曲がり、エスカレーターに乗り、書店を過ぎ、キャラクターショップの先へと進んだ。いろんなものが目に飛び込んできた。



「この洋服、かわいい! 陽呼子ちゃんに似合うと思うよ!」



「あのベースって佳夏ちゃんが前に使っていたモデルと同じだっけ?」



「あの本、とても面白いよ。宇宙の果ての星の生命体が地球を研究して地球へ向かう物語なんだ!」



「流湾! あのキャラクター! サメ界のキングモンスターじゃないか! あれ、欲しいなぁ~。クレーンゲームであるかな?」



そんな会話をしながら、4人はフードコートに着いた。ここでそれぞれ食べたいものを買うことにした。



僕は期間限定のつけ麺を買った。鮫郎はたこ焼きである。佳夏はステーキ定食。陽呼子はサイコロステーキ定食を頼んでいた。


僕は佳夏がステーキをおいそうに食べるのを横目につけ麺をすすっていた。魚介スープの香りが鼻に抜けた。

鮫郎はたこ焼きが熱すぎてやけどしたと涙目になって魚のように口をパクパクさせていた。「でも、美味しんだよ~。」って言っている。

陽呼子はサイコロステーキをおいしそうに頬張る。陽呼子がおいしそうにステーキを食べているのを見ているとなんだか不思議と安心する。気を遣わずに豪快にステーキを食べていることがなんだか嬉しい。この感情はよく分からないが、陽呼子がおいしそうな顔をみていると幸せに感じた。

ヒヨコって名前なのに肉を豪快に食べているのはホラーなのかもしれないが・・。


とはいえ、つけ麺も美味しかった。

ごちそうさまです!




お腹が満たされた4人は映画館へ向かった。


佳夏はふいに陽呼子に聞いた。


「今日は『リミックスライフ』って映画を見るんだよね? それは有名な映画なの?」


陽呼子は少し恥ずかしそうに答えた。


「いや~。どうかな~。私が見たい映画に付き合わせてごめんね~。 でも、たぶん良い作品だよ。俳優の影法師くんが出ているんだよ。青年とDJの女の子が出会って人生が変わるお話みたい。」


「俳優の影法師くんって・・。誰だっけ? ・・・。あっ! あのクイズ番組に出ていた人かな・・。」


「たぶん、そう! あの頭がいい感じの人。」


「ああ~。あの人か~!」


「陽呼子ちゃんって、あんな感じの人がタイプなの?」


「いや~。そういうわけでもないんだけど。なんだか、この映画は見たい気分になったんだよね・・。なんとなく・・。」


「あっ! 出た!! 陽呼子ちゃんの直感!! 陽呼子ちゃんの直感は時々恐ろしいほど当たるよね! びっくりするもん! ものすごくはずれる時もあるけど!」


「佳夏ちゃん~。それって褒めているの~。 当たるし、はずれるなら平均して普通じゃん。なんだかつまらない能力ね。」


「いやいや、陽呼子ちゃんの直感は凡人のそれとは違うって~。私は陽呼子ちゃんの直感を信じて音楽をやっている部分もあるんだから。瑠々るるかちゃんも言っていたよ。陽呼子ちゃんの直感は時空を越えてものごとを認識しているって。」


「時空を越えてものごとを認識しているって壮大な表現ね~。まぁ~ 確かに不思議なことが起きることもあるし、それを信じることも疑うこともあるけど・・。じゃ~ 今日の映画もその私の直感ってやつね! 面白くなくても文句なしね!」


「見る前から面白くないなんて言わないであげてよ~。作家さんも監督さんも影法師くんも泣いちゃうよ~。」


「あっ。そうね! まだ分からないよね。見てのお楽しみことね!」



陽呼子と佳夏は楽しそうに会話をしていた。僕はその会話を聞いていないふりをしつつも聞いていた。めちゃくちゃ気になっていた。そのため、鮫郎が横で一生懸命に話していたサメ界のキングモンスターのキャラクターの必殺技に隠された秘密についての話は全然耳に入っていなかった。それでもまだ話している。


「流湾! だからあいつがサメ界のキングモンスターって言われているんだよ~。オレもサメ界のキングって呼ばれたいな~。」




そして、4人はチケットを発券し、映画館の席に座った。



大きな映画のスクリーンには広告の映像と映画泥棒の警告動画が流れていた。広告の映像も大スクリーンでみれば大迫力である。





―映画広告―




「ジンベエザメ王国の青年、『シンベエ』の大冒険!!

南極にあるペンギン王国へ伝説の真珠を届けるための旅。

全ベエが泣いた・・

ファン待望の感動アニメ映画。



『BAY AREA FANTASY the MOVIE (ベイエリアファンタジー・ザ・ムービー)』


♪ 壮大な音楽が流れる。



(ペンギンのおばあさん)

「あら、ジンベエザメなんて珍しい・・。 怪しいわね・・。」



(主人公の『シンベエ』)

「いや・・。違うんです・・。あの・・。帰ります!!」



弱気なジンベエザメの『シンベエ』は幾多の困難を乗り越えて、ペンギン王国にたどり着くことができるのか?



(コバンザメの住民)

「生意気だ! 弱虫ジンベエザメのくせに。」



(シンベエ)

「僕だって、大きなひれにまだ情熱を持っているんだ! こんな小魚に負けるわけがないだろう! かかってこいよ!」



―ちょっとした戦闘シーンー



(マナティーのおじさん)

「マナティーおじさんだよ~。そんなに頑張っても無駄だよ~。冒険は諦めた方が楽だよ~。・・・。


私は悪役じゃないよ~。」



全国の劇場で公開中!!





鮫郎が絶対にこの映画を今度見ようと意気込んでいた。

そんな中、今日見る映画は始まった。




『リミックスライフ』 





(つづく)

読んでくださってありがとうございます!!


『リミックスライフ』の本編に続きます!

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