12-1 After days その1
春休みに入った私達は、二人で旅行することになった
私達はあの日、お互い自らの想いを告げて……そして結ばれた。
とても嬉しいことだった……そして、あの日程生まれてきてよかったと思った時はないと思う。
旅行の場所は、京都。
二人で行くにはちょっとばっかり遠い距離だったけど、二人で行けるならどこでもよかったというのは本心だったりする。
けど、折角だから……遠出をしてみたいなって私が考えたから、健太君もそれに便乗してくれたってこと。
一体どんな旅行になるんだろう。
楽しい旅行になるといいな……。
二人きりで旅行なんて、初めての経験だし……一体どんなことが起きるんだろう……?
第十二のカケラ After days
三月下旬。
舞台は京都。
温かい風が、僕らの身体を撫でるように吹く。
天気は晴れ。
絶好の旅行日和だ。
僕らは今日、電車で揺られることおよそ二時間弱。
旅行の為に京都に来ていた。
メンバーは僕とかなえさんの二人だけ。
何と言うか……まるで新婚旅行に来たような気分だ。
「楽しみだね、健太君♪」
隣では、笑顔のかなえさんがいる。
僕に向かってそんなことを話しかけてきた。
「そうだね……一体どんな旅行になるんだろう」
「きっと楽しい旅行になるよ。だって……健太君と一緒だから」
「僕も……そんな気がするよ。だって……かなえさんと一緒だからね」
僕達は今、一部の生徒からもうわさされている通り、恋人同士となっている。
僕らは同じ想いを抱いていた……だけど、互いにそれを知ることが出来なかった。
だから、高校一年生が終わる頃になってまで、僕達は互いの想いを知ることが出来なかった。
だけど、ある日それは通じ合って。
僕達はこうして、恋人同士っていうこととなったのだ。
「それにしても……何だか不思議な気分だなぁ」
「何が?」
僕の呟きに対して、かなえさんが尋ねてくる。
聞こえてたのか……自分にしか聞こえない程度に小さく言葉を発したつもりだったんだけどなぁ。
「何というか……まるで夢の中にいるみたいでさ。こうしてかなえさんと二人一緒にいることが」
「夢なんかじゃないよ……私達は幸せの中にいるんだよ」
「……だね。僕達は今、とっても幸せなんだと思う」
「うん!」
笑顔でかなえさんが言う。
やっぱり笑顔のかなえさんは……可愛いなぁ。
「どうしたの?」
「な、何でもないよ!」
見とれてたら、いつの間にかかなえさんの顔が目の前まで迫ってきていた。
危ない危ない……このまま自分の世界に入り込んでしまうところだった。
「それじゃあかなえさん……行こっか?」
スッと、僕は自然に手を差し出す。
手をつないでいこうって合図だ。
「……うん」
かなえさんも、僕のそんな行動に反応するように、手を差し出す。
そして僕達は、手をつないだまま歩き出した。