表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/106

11-6 迷いの迷宮 その6

「……え?」


驚いた。

ただひたすら、僕は驚いた。

だって、いきなり告白されたんだもの。

これで驚かない人はいないだろう。


「えっと……それって、本気で、ですか?」

「……ええ、そうよ」


恥ずかしそうに顔を赤くする真鍋先輩。

そ、それじゃあ、真鍋先輩が僕のことを避けていたのって……。


「あ、あれは……避けてたんじゃなくて、どう接すればいいのか分からなかっただけなのよ。見るだけで顔が赤くなっちゃうし、その……」

「……でも、前までは普通に会話出来てましたよね?どうして今になって?」


何で今になってそんなことに気付いたのだろう。

僕はそこが少しだけ気になっていた。

真鍋先輩は答える。


「だ、だって、最近の健太君、その……凄く、何だか、凄くカッコイイから……」

「……へ?」

「何というか、その……何かをやり遂げたような感じが、して……」


……何かをやり遂げる、か。

僕は今、こうしていろんなひとの『願い』を叶えている。

それが少し、この世界にも影響してきたのかな。


「……そうですか。ありがとうございます」

「!!い、いえ……どういたし、まして」

「あ、あれ?」


また顔を背ける真鍋先輩。

こころなしか、その顔は……赤かった。


「どうしたの真鍋先輩?なんで顔を赤く……」

「な、何でもないわよ!いいから一旦向こうを向いてて頂戴!!」

「は、はい!」


突然怒られる。

な、何なんだ……一体。


「ちょっと……気持ちの整理を、したいから……」

「……」


答えられない。

とっさに言葉が出なかったという方が正解か。

とにかく僕は……声が出なかった。


「それにしても、どうしてだろう……ここまで胸が熱くなるのは」

「……そうですね。何というか、恥ずかしいというか……」

「わ、悪かったわね!私が恥ずかしくなるようなセリフを言って!!」

「い、いえ、そういうわけじゃないんですけど……」

「……それで、答えは?」

「え?」


真鍋先輩がそう尋ねてくる。

……そうか。

聞かれたからには、僕は答えを出さなければならないのか。


「……そうですね」

「……」

「……真鍋先輩からそう想われていたことを知った時、僕はとても嬉しいって思いました」

「……それじゃあ」

「けど……駄目なんです」

「……え?」


これだけは、真鍋先輩に言っておかなければならないことだから。

だから僕は、真鍋先輩に伝えないといけないんだ。


「僕には……その、すでに、好きな人がいますから……」

「……そう。その子は、可愛い子なの?」

「……はい。クラスにいる女の子なんですけど、とても優しくて、魅力的な女の子なんです。出会った時から少し気になっていて……それでいつの間にか、好きになってました」

「……そう」


悲しそうな表情を見せる真鍋先輩。

……これじゃあ『願い』をかなえたことにはならなかったけど、僕は自分の気持ちに嘘はつけない。

こうしてこの世界の自分が『自我』を持っている以上、その気持ちは裏切れないのだから。


「ありがとう……ね。私の願いは、これで叶ったわ」

「……え?」












真鍋先輩の最後の言葉と共に。

僕の意識は、急速に遠のいていく。

真鍋先輩が、うっすらと涙を浮かべているのを見ながら……僕の意識は……。













評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ