11-6 迷いの迷宮 その6
「……え?」
驚いた。
ただひたすら、僕は驚いた。
だって、いきなり告白されたんだもの。
これで驚かない人はいないだろう。
「えっと……それって、本気で、ですか?」
「……ええ、そうよ」
恥ずかしそうに顔を赤くする真鍋先輩。
そ、それじゃあ、真鍋先輩が僕のことを避けていたのって……。
「あ、あれは……避けてたんじゃなくて、どう接すればいいのか分からなかっただけなのよ。見るだけで顔が赤くなっちゃうし、その……」
「……でも、前までは普通に会話出来てましたよね?どうして今になって?」
何で今になってそんなことに気付いたのだろう。
僕はそこが少しだけ気になっていた。
真鍋先輩は答える。
「だ、だって、最近の健太君、その……凄く、何だか、凄くカッコイイから……」
「……へ?」
「何というか、その……何かをやり遂げたような感じが、して……」
……何かをやり遂げる、か。
僕は今、こうしていろんなひとの『願い』を叶えている。
それが少し、この世界にも影響してきたのかな。
「……そうですか。ありがとうございます」
「!!い、いえ……どういたし、まして」
「あ、あれ?」
また顔を背ける真鍋先輩。
こころなしか、その顔は……赤かった。
「どうしたの真鍋先輩?なんで顔を赤く……」
「な、何でもないわよ!いいから一旦向こうを向いてて頂戴!!」
「は、はい!」
突然怒られる。
な、何なんだ……一体。
「ちょっと……気持ちの整理を、したいから……」
「……」
答えられない。
とっさに言葉が出なかったという方が正解か。
とにかく僕は……声が出なかった。
「それにしても、どうしてだろう……ここまで胸が熱くなるのは」
「……そうですね。何というか、恥ずかしいというか……」
「わ、悪かったわね!私が恥ずかしくなるようなセリフを言って!!」
「い、いえ、そういうわけじゃないんですけど……」
「……それで、答えは?」
「え?」
真鍋先輩がそう尋ねてくる。
……そうか。
聞かれたからには、僕は答えを出さなければならないのか。
「……そうですね」
「……」
「……真鍋先輩からそう想われていたことを知った時、僕はとても嬉しいって思いました」
「……それじゃあ」
「けど……駄目なんです」
「……え?」
これだけは、真鍋先輩に言っておかなければならないことだから。
だから僕は、真鍋先輩に伝えないといけないんだ。
「僕には……その、すでに、好きな人がいますから……」
「……そう。その子は、可愛い子なの?」
「……はい。クラスにいる女の子なんですけど、とても優しくて、魅力的な女の子なんです。出会った時から少し気になっていて……それでいつの間にか、好きになってました」
「……そう」
悲しそうな表情を見せる真鍋先輩。
……これじゃあ『願い』をかなえたことにはならなかったけど、僕は自分の気持ちに嘘はつけない。
こうしてこの世界の自分が『自我』を持っている以上、その気持ちは裏切れないのだから。
「ありがとう……ね。私の願いは、これで叶ったわ」
「……え?」
真鍋先輩の最後の言葉と共に。
僕の意識は、急速に遠のいていく。
真鍋先輩が、うっすらと涙を浮かべているのを見ながら……僕の意識は……。