11-5 迷いの迷宮 その5
「……」
そして、日が経つこと数日後。
僕は屋上に、呼び出されたのである。
時間は昼休み……そして、僕を呼び出した人とは、
「……真鍋先輩」
「……健太君、来てくれたのね」
僕のことを呼び出したのは、真鍋先輩だった。
何でも、重大な話があるからと、こうして僕のことを呼び出したらしい。
……何だろう、無駄に緊張する。
「あ、あの……」
話しかけずらい。
数日間話をするどころか……目すら合わせていなかったから、なかなか顔を見て話しかけることすら出来ない。
それは真鍋先輩とて同じことのはずなのに……真鍋先輩はこうして僕と会話する機会を作ってくれた。
それは大変ありがたいことでもあり……勇気がいることだと思うのによくやってくれたと僕は思った。
「ところで……今日はどうして僕を呼んだのですか?」
まずはその理由を聞かない限りには、話が始まらない。
そう考えた僕は、まず真鍋先輩にそう話を切り出した。
……しばらく真鍋先輩は口を閉じていて、そして僕に話し始めたのだった。
「最初に言っておきたいことがあるの……ごめんなさい。無意味に貴方のことを避けたりして」
「いいんですよ……謝らなくても。僕にも何か非があると思っていたところでしたから」
実際には何もなかったわけだけど……むしろそっちの方がありがたい。
僕のせいで避けていたわけではないということは……僕は嫌われていたわけではないということだから。
「じゃあ……何で僕のことを避けてたんですか?」
するとここで、僕の中にこんな疑問が生まれてくるのは必然だった。
……再び真鍋先輩は黙ってしまう。
「真鍋先輩?」
「……この際だからはっきり言ってしまうわね、健太君」
「へ?あ、はい」
いきなり真剣な表情になった真鍋先輩。
何かの決断でもしたのだろうか……その表情は偉く決意に満ちた表情をしていた。
「みんなから聞かれたわ……私の様子がおかしいって。けど、自分でも分からなかったのよ」
「分からなかった……ですか?」
「ええ。どうして私は健太君に顔を合わせられないのか……話すことが出来ないのか。分からなくて……顔を合わせてみると、何だか恥ずかしくなっちゃったのよ」
「は……恥ずかしい?」
よく、分からなかった……。
恥ずかしいって、どうして僕に話しかけることが恥ずかしいことなのだろうか?
「私は……多分自分の気持ちに迷っていたのだと思うわ。自分が健太君に対してどんな感情を抱いていたのかが分からなくて……ずっと迷っていた。だからあんな態度をとったのだと思う」
「……」
「そして、ここからが重要な話なの……聞き洩らさないで最後まできちんと聞いてね」
「は、はい」
念を押されて、僕は同意をする。
真鍋先輩は、一回深呼吸して、それから僕にこう言ったのだ。
「私は……私は木村健太君のことが、好きです……」
前に指摘があったのですが……この小説のタイトル「私立相馬学園 ~multi end tales~」ですが、「multi」の綴りが「multh」になっていましたので、訂正いたしました。
ご迷惑をおかけいたしましたが……今後ともよろしくお願い致します。