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11-1 迷いの迷宮 その1

私は、貴方に尋ねたい。

私のことを、どう想っているのか。

私は、自分に尋ねたい。

貴方のことを、どう想っているのか。

迷いは不安を生み、不安は私の想いを強くする。

どんどん強くなっていくこの想いだけど、この気持ちの正体が何なのか。

また、こんなことをどうして考えるようになったのか……分からないことはとにかく多かった。

私はどうしてこの人のことを強く想うようになったのだろう。

私はどうして数多くいる男性の中からこの人を選んだのだろう。

それらのことを考えると、私はどうしても、更に思考の迷宮の奥へと迷い込んでしまうのだった。

抜け出すことの出来ない、思考の迷宮に。










第十一のカケラ 迷いの迷宮










このところ、真鍋先輩の様子が少しおかしい。

何かに悩んでいるかねように、時々思考の中に自分の意識を閉じ込めて、たまに僕と目線が合ったかと思うと、会話は続かないし、すぐに目線を逸らす時すらあった。

……なんだろう。

どこかおかしいんだよなぁ。


「……で、僕のところに来てみた、と」

「……そうですね」


何となく、吉田先輩に聞くのがいいだろうと考えた僕は、思い切ってそう尋ねてみた。

吉田先輩は表情をほとんど変えずに、僕にそう言ってきた。

更に言葉を繋げる。


「……君はどこまで鈍感な人間なんだろうなぁ」

「はい?」

「……なんでもない、独り言だ。君が気にすることでもない」


なんだろう……そう言われると余計に気になって仕方ないんだけど。


「とにかく、その質問は僕にするべきものではない……その手の話題は本人に直接聞くか、水島とかがいるだろう……もっとも、真鍋は今日、風邪で休んでるみたいだけどな」

「そうですか……」


風邪で真鍋先輩が休んでいる為、本人に聞こうとしたところで明日になってしまうがオチだった。

ならば、ダメ元でもいいから音羽さんに聞いてみるのもいいかもしれないな。

そう思った僕は、


「ありがとうございました、吉田先輩。音羽さんが来るのを待ってみることにします」

「そうか……そういえば、三倉なんかもこの手の話題には食い付きそうだな」

「……とにかく、どちらかが来るまで待ってみることにします」


何となく会長に聞くのだけは避けたいと思った。

だから、会長が来たとしてもこの話はしないようにしよう。

と、そんな時だった。


「こんにちは~まだ二人だけ~?」


間延びした言葉と共に、三倉先輩が入って来た。

吉田先輩が答える。


「ああ。会長も少し遅れてくるそうだ。水島はまだ来てなくて、真鍋は風邪で休んでる」

「あら~風邪は大変だね~」

「……あの、三倉先輩」

「どうしたの健太君~?そんな真剣な表情をして~」


いつもの調子で、三倉先輩が応対してくる。

なんだろう……緊張感が解れていくような感じた。

僕は三倉先輩に、自分が思っていることを包み隠さずに告げてみる。

三倉先輩は真剣な表情でそれらのことを聞いてくれて、その後で僕にこう言ってきたのだ。


「それはね~……瑞穂ちゃんは健太君のことを~……なんでもないよ~。こういうことは自分で気付かなくちゃ~」


何かを言ってくれるのかと思ったら、結局はぐらかされてしまった。

だけど多分、三倉先輩は何かに気付いたんだと、僕は思った。

















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