0-11 Lost wish
「帰ってきたようだな」
―――ん。
気付けば僕は、いつものカケラが散らばる世界にいた。
ただ、そのカケラの数はもうかなり少なくなってきた。
誰かが写っているカケラが二つと、相変わらず何も写っていないカケラが一つ。
その数、後三つであった。
これらのカケラさえ巡ってしまえば、僕は……みんなは元の世界に帰れる。
だけど……マリアさんが消えてしまう可能性が高い。
何だろう……マリアさんには消えて欲しくないと思っている自分がいる。
「どうしたのだ?」
―――いや、何でもないよ。それより次のカケラだよね。
「うむ……そなたの頑張りによって、残された世界のカケラも後三つじゃ……内、誰かの願いが込められているのは二つ」
―――残り一つは……何なのか分からないの?
僕はマリアさんに、思わずそう尋ねていた。
マリアさんが答える。
「……いや、分かってきておるぞ」
―――本当に?
「うむ……本当だ」
そっか……。
僕がいろんな世界のカケラを巡っている内に、マリアさんは調べてくれていたのか……。
―――それで、どんなことが分かったの?
僕はマリアさんにそう尋ねる。
マリアさんは、少しだけ考えるように言葉を詰まらせる。
姿は見えないけど……恐らく首を傾げていることだろう。
「まず一つ……あのカケラには、何者の願いも込められておらぬ」
―――え?
誰の願いも込められていない?
ということは……このカケラはひょっとしたら副次品ということになるのか?
「そしてもう一つ……このカケラは、何らかの世界へと出ていくものということだ」
―――何らかの世界へと……出ていくカケラ。
何だろう……そんなカケラが、この世界にあるなんて思わなかった。
だけど、前にマリアさんが言っていたじゃないか。
『世界のカケラは、誰かの願いが込められて出来ている』って。
つまり……逆を言ってしまえば、誰かの願いがない限り、世界のカケラは生まれることはないということだ。
……それでも、このカケラは何処かに通じていると言う。
……分からない、なんのことやらさっぱり分からない。
「……恐らくそなたが世界のカケラを巡り終える頃に、このカケラの正体が分かるであろう。だからそなたは、カケラを選ぶがよい」
―――う、うん……。
少し戸惑いもあったけど。
僕は、どのカケラにしようか迷った挙げ句に……。
「そのカケラで……よいのだな?」
―――うん。
マリアさんの質問に、僕は力強く頷いた。
手にしたカケラに写っているのは……真鍋先輩の姿だった。
「それでは……念じよ」
―――うん。
僕は、そのカケラの中に入るように念じる。
そして……僕の意識は、カケラの中へと吸い込まれて行ったのだった。




