10-2 神様がくれたチャンス その2
そんなわけで、日曜日になった。
一旦駅前に集合した後に、僕達はそこから徒歩で移動した。
歩くこと数十分。
目的のスケート場が、その姿を現した。
「おお……」
「結構でかいんだな」
大貴が思わずそう呟いていた。
見た目は、かなり大きそうなスケート場だった。
多分中に入ってみると、もう少し人が入れるような造りになっていることだろう。
「ここで今日はスケートをやるんだね……私スケートは初めてなんだよねぇ」
美咲が呟くように言う。
その呟きを聞き逃さなかった男がいた。
「何!?それは本当か?なら、この俺海田吉行が手取り足取り……」
「はいはい。吉行の変態的発言はおいといて」
「おいおい何を言ってるんだい?この俺が、いつセクハラ発言をしたとでも?」
「……いつもだよね、お兄ちゃん」
ミサさんからのアシストを受けたかのように、杏子ちゃんが吉行に止めをさす。
……あ、吉行が隅っこの方で体育座りしてるのが見える。
「バカやってないで、さっさと中に入っちまおうぜ」
「そうね。折角来たのに時間がなくなっちゃうのも勿体ないし」
大貴の言葉に答えるように、かなえさんが言った。
少し吉行の事を気にしながらも、僕達は中に入って行った。
「……って、ちょっと待てっての!」
「……あ、お兄ちゃんが追いついて来た」
焦ったような表情を見せ、吉行がこっちまでやってきた。
心なしか、冷や汗をかいているようにも見えた。
「ま、そんなことより受付だ」
「大貴!そんなことってなんだよ!」
「無論、そのまんまの意味だけど……文句があるのか?」
「大有りじゃボケ!」
吉行が珍しくキレていた。
だけど、僕達はそのまま受付の方まで歩いて行った。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
受付の女の人が、僕達に向かってそう尋ねてくる。
えっと、今日来てるメンバーが僕・吉行・かなえさん・美奈さん・杏子ちゃん・美咲・ミサさん・大貴の八人だから……。
「八人です」
「畏まりました。それではこの紙に必要事項をお書きください」
言われて、僕達はそれぞれに渡された紙に、必要事項を書く。
名前、年齢、靴のサイズ、身長、体重などを書くことになっていた。
「よろしいでしょうか?」
「は、はい」
「それでは、スケート靴の方をお持ちしますので、しばらくお待ちください」
受付の人に紙を渡し、少し待つことになる。
待つこと数分後。
「お待たせしました。こちらが各サイズ毎の靴です」
「……ありがとうございます」
僕達は受付の人から靴を受け取って、スケートリングに繋がる扉を開く。
何人かはすでに滑っているようで、スケートリングには、人影がチラホラと見えていた。
そんな中に。
「あれは……和樹?」
和樹達の姿を、発見したのだった。