10-1 神様がくれたチャンス その1
ずっと会っていなかった。
あの時から、想いだけが強くなっていった。
けれど、私のこの想いを、あの人に伝える方法がなかった。
だから……今日この場で巡り会えたことを、神様がくれたチャンスなんだと信じたい。
第十のカケラ 神様がくれたチャンス
「なぁ健太、明日どっかに行かないか?なんだか最近暇でしょうがないんだよなぁ」
「暇なのはいいことよ。それだけこの国が平和だってことを証明してるようなものなのだから」
「いや、そりゃそうかもしれないけどよ……」
放課後、いつものように僕達は集まって話をしていた。
メンバーはいつも通り。
そして今僕達が何を話しているのかと言うと……。
「今度の日曜日に何処かに行こう、ねぇ……」
大貴がそんなことを呟く。
事の発端は、吉行のこの発言からだった。
「なぁ……暇じゃね?」
いや、確かに吉行の言う通りかもしれないけど、こんな発言から話が発展するなんて……みんなもよっぽど暇だということなのだろうか?
「ボクは今回はパス……その日はテレビのインタビューに答えなきゃならないから」
「それは……ご苦労様」
マコが残念そうな表情と共に、そう告げる。
インタビューか……それじゃあ仕方ないね。
「私はもちろん行くわよ……かなえは?」
「今度の日曜日は私も大丈夫だと思うから……行こうかな」
「私も行くわ!」
これで吉行・かなえさん・美奈さん・ミサさんの四人は確実に行くこととなった。
それなら……。
「ちょうどこの季節だし、スケートにでも行かないか?」
「「「スケート?」」」
大貴からそんな提案が出される。
……行く場所の提案をしてきたってことは、大貴も行くって考えてもいいのだろう。
「いいんじゃないかな?この前スキーには行ったけど、スケートはまだだったと思うし」
「別に反対はしないわ……ただ、面白そうじゃない」
ヤバい……美奈さんの表情が、何か悪巧みをしてる時のものになっている。
なんだってこうも……美奈さんはノリがいいのだろうか?
「もちろん、うちからは杏子を連れてくる……お前も美咲ちゃんを連れてくるだろう?」
「まぁ……一応聞いてみるよ」
実は美咲、スケートは初めてだったりする。
だから一緒に来てくれるのかどうかは微妙なところだったりもするんだけど……。
「おう、そうしてくれ。人数は多い方が楽しいからな♪」
「……そうだね」
吉行の言う通りだ。
こういう風にみんなで外に行く時は、その人数が多ければ多いほど楽しいものに変わっていくに違いない。
「よし、これで今度の日曜日の予定は埋まったな……それじゃあみんな、9時に駅前ってことでいいか?」
「でも、この近くにスケート場なんてあったかな……」
「心配するな、俺が場所を知ってるからな……少し遠目だが」
この際贅沢を言ってる場合ではない。
多少遠くても、僕達は大貴が言うスケート場に行くこととなった。
「ボクも行きたかったなぁ」
……なんか、ごめん、マコ。