0-10 Worry
ん……僕はまた、この世界に帰ってきたのか。
残るカケラは後四個。
内、何も写っていないカケラが一個。
このカケラは、一体どのような意味があるのだろうか?
「帰ってきておったのか?」
その時、マリアさんの声が僕の頭の中に直接響いてきた。
姿を表さないのは、力が弱まっているためだろう。
この世界に散らばるカケラが消えていくと共に、マリアさんの力もまた、徐々に弱まっていく仕組みになっているのだろう。
そもそも、マリアさんはこの世界を造り上げた、云わば創造主だ。
ならば、自分が造り上げた世界が消えたら、本人はどうなる……?
「どうしたのだ?何やら思い詰めたような表情をして」
―――……なんでもないよ。ちょっと考え事をしていただけだから。
「……そうか、ならよいのだが……」
心配そうな声で僕にそう言ってくるマリアさん。
僕としては、もう少し自分の身も案じて欲しいところなんだけどなぁ。
「ところで……そろそろ次のカケラを選んだらよいだろ。何を躊躇っておるのだ」
―――その前に、一つだけ質問があるんだけど、いいかな?
「質問?別によいが、どのような内容だ?」
マリアさんは、僕にそう尋ねてくる。
少し躊躇った後で、僕はマリアさんにこう尋ねた。
―――この世界が消滅した時……マリアさんはどうなってしまうの?
そう僕が尋ねた時。
マリアさんの声は、あからさまに止まった。
「……分からぬ。恐らくは、消えてしまうのかもしれぬがな」
―――それじゃあ、マリアさんはそのことを分かってて……。
「……早く選ぶが良い。さもなくば、時間がなくなってしまうぞ?」
―――時間?
分からない。
何でこんなタイミングで、『残りの時間』なんて言葉が出てくるのだろうか?
この世界は、別に時間とかは関係なしに動いているもののはずなのに。
「……それでは、選ぶがよい」
……言われて僕は、近くにあったカケラを拾う。
そこには、前に会った覚えのある顔……須永さんの顔が写っていた。
―――須永、真弓さんか……。
「その者のカケラにするのだな?」
―――うん。
僕は、マリアさんに言われる前に、強く念じる。
……もうすぐ、カケラの世界を巡る旅は、終わる。
そう考えると、何だか少しだけ寂しい気持ちになった。