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9-2 その先に何を求める その2

「夕夏さん……」


僕は特に意識することなく、そう言葉を返していた。

すると夕夏さんが、


「……何?」

「あ、いや、何でもないよ」


どうやら僕らの話が聞こえていた様子も見られない。

そう思った僕は、夕夏さんに尋ねられて、そう答えたのだった。

正直なところ、僕にもこの気持ちの正体が分からなかった。


「いやぁ、健太の周りには、どうしても女子が多いなって話をしてたところだ」

「一度もそんな話はしてないよね!?」


何言ってるのさ、吉行は。

別に僕の周りだけ女子が多いってわけじゃあ……って、あれ?


「なんでみんな妙に納得してるの?」

「いや、珍しく渡辺の言っていたことに同一性することが出来たからな……つい」

「うん……健太君は誰にでも優しいから、すぐに新しい子が近づいてくるんだよね……」


さりげなくかなえさんが爆弾発言をしていたような気もするけど、ここは無視する方向で行こう。

無駄に突っ込みをいれるだけ自滅する可能性は大だし。


「流石は歩くフラグ製造機ね……いるだけでフラグを建てまくるとは、最早エロゲの主人公並の職人芸ね」

「何さその例えは?それに歩くフラグ製造機って何!?僕はそんなんじゃないってば!」

「……諦めた方が身のためですわ、健太」

「夕夏さんまで!?」


さっきまで傍観者の立ち位置にいたと思ったから、夕夏さんの存在をマークし忘れていた。

このままじゃあ……どんどん僕の立場が危うくなってしまう!


「……まぁ、冗談はこれまでにしといて」


夕夏さんはそう呟くと、


「……健太、昼休みに時間はあるかしら?」

「……昼休み?」


夕夏さんの表情が、真剣なものに変わっているのが分かった。

……きっと昼休みに、夕夏さんは僕に何か重要な話をするのだろう。

夕夏さんから感じられるオーラみたいので、そのことが十分に分かった。


「うん、時間は十分にあると思うよ……確か昼休みに何か用事が入ってるとかもない筈だし」

「そう……それならよかった」


一瞬、どこかホッとしたような表情を浮かべた夕夏さん。

しかし、その後ですぐに真剣なものへと変わっていった。


「……なら、昼休みに屋上に来てくれません?」

「屋上に?」

「ええ……そこで大切な話をしたいと思っていますの……だから、絶対に来てくださいね」

「う、うん……」


夕夏さんは、僕にそれだけを伝えると、さっさと自分の席へ戻ってしまった。


「……どういうことなんだろう?昼休みに屋上で話って」

「多分さっきの件のことだろうな……佐伯がその場で何を言うのかは、流石に予測は出来ないけど」

「そうね……話があるとしたら、さっきの留学の件だと思うわ」

「やっぱり……?」


僕もうっすらながらそう考えていたのだ。

……このタイミングで大切な話があると言われたら、それしか考えられなかったからだ。


「ほれ、席につけ」


その時、教室の扉が開かれて、外川先生が入ってきた。

僕達は慌てて自分の席に座ったけど、その間も僕の目線は、しっかりと夕夏さんの方を見ていた。
















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