1-6 ~if~あの時告白が出来ていたとしたら その6
「……」
僕は思わず言葉を失ってしまった。
出てきた愛が着てきたのは、黒いワンピース。
なんというか、何時もよりも大人っぽい雰囲気が感じられて、いいかもしれないと思った。
「ど……どうかな?」
顔を赤くして、愛が尋ねてくる。
……正直、似合ってると思う。
「……似合ってる、と思うよ」
「本当に?」
愛が更に尋ねてくる。
僕はその問いに対しても肯定の言葉で返す。
すると愛は、
「……それじゃあこっちも着てみるね」
そう言って赤いトレーナーと白いスカートに着替える為に、もう一度更衣室の中に入っていった。
……しかし、あの服の破壊力はなかなかだった。
改めてときめいてしまう程だった。
「お待たせ!」
次の服を着てきた愛は、今度は笑顔で更衣室から出てきた。
……似合っていると思う。
「どっちの方がよかったかな?」
首を傾げつつ、愛がそう尋ねてくる。
……僕は少し考える素振りを見せた後に、
「黒のワンピースの方がよかったかな」
と、正直な気持ちで答えた。
すると、
「なら黒いワンピースにしよっと!」
そう言って、更衣室に行って何時もの服に着替えてきた後に、黒いワンピースと赤いトレーナー・白いスカートを持って、いらない方を元の場所に戻してから、レジに向かう。
「……これ、ください」
「かしこまりました……」
店員がレジを使い、精算をする。
「3500円になります」
「えっと……お金お金」
愛がポケットの中より財布を出そうとする。
僕はその前に財布を取り出し、
「5000円でいいですか?」
「え?」
店員に5000円札を渡して、お釣りを貰う。
服も紙袋の中に仕舞ってもらい、その紙袋も僕が持つ。
「ありがとうございました」
そう店員が言ってきたのを聞きながら、僕と愛は洋服売り場から出た。
「えっと、健太……」
「いいって。服を一着買う分のお金は最初から用意してたんだし」
「でも、私の服だよ?それに、持ってもらうのも……」
「僕が愛にこの服を着て欲しいって思ったし……少し安い服だけど、愛にプレゼントしたくて」
考えてみれば、過去に僕から何かをプレゼントしたことはなかった。
僕にはそういう物を買うという知識がなかった為だ。
愛と付き合うことになった際、吉行にアドバイスしてもらったのだ。
「……ありがとう、健太」
「どう致しまして」
素直にお礼を言ってくれた愛に、僕は言葉を返す。
……なんか、改めてお礼を言われると、少しだけむずがゆい気分になるような気もするな。
「それじゃあ、そろそろお昼を食べよっか?」
「そうだね。このデパートのどこかのお店で食べよっか」
「賛成!」
時間が過ぎるのが早いもので。
もうそろそろお昼の時間のとなる所だった。
なので、僕達は昼ごはんを食べに行くこととなった。
後四話くらいは愛の話が続くかな……。