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8-3 希望を落とした少女 その3

そして放課後。

僕はついに、作戦を実行した。


「……」


音羽さんが教室から出ていくのを見計らって、少し遠くの方から音羽さんの後をついていく。

美奈さんの話だと、確か音羽さんのカバンの中に盗聴器をつけているとの話だった。

だから、学校の外に出た途端に、僕はポケットの中からさっき美奈さんにもらった盗聴器のイヤフォンを耳につける。

イヤフォンからは、ザザ……ザザ……というノイズの音が鳴り響く。

同時に、カバンの中に入っている為か、時々教科書などがカバンにぶつかる音なんかも鳴り響いていた。


「こっちの方向なのか……」


やがて僕達の周りには、誰も人がいなくなっていた。

さっきまでは僕と同じ学生が歩いていた為、特に気にすることなく歩いて帰れていたのだが、ここまで来ると少し気にしなくてはならない。

音羽さんに気付かれてしまえば……次の日から間違いなく僕は避けられてしまうだろう。

いや、その前に学校でこのことについて追及されるのがオチだろうか。


「……ともかく、今は音羽さんに見つからないようにしないと」


物影に隠れながら、何とか僕は尾行を続ける。

時々バレそうになった時が何回かあったけど、それもどうにかやり過ごすことが出来た。

そして……。


「……ここが、音羽さんが住んでいるマンション」


音羽さんは、大きくもなく小さくもない、白を基本としたマンションに住んでいた。

9階建だが、音羽さんが何階に住んでいるのかまでは分からない。

盗聴器からは、音が聞こえる。

……ん?


「どこかで止まったようだ……」


足音が突然止まった所から考えるに、どうやら音羽さんは自分の部屋の前に到着したらしい。

カバンの口を開けて鍵でも取り出したのか、ジャラジャラという音が聞こえてきた。


「……って、盗聴器はばれないのか?」


さすがは美奈さんだ。

そこらへんは本当にぬかりないのだろう……。



(ガチャッ)



鍵が開くような音がする。

……ここに、音羽さんが僕達に教えてくれない何かがあるはずなんだ。

この家に……何かが。


「た、ただいま……」

「おう、お帰り。ようやっと帰ってきたか」


聞こえてきたのは、少しおびえる様子の音羽さんと、若い男性の声。

……歳は三十台後半と言ったところだろうか?

多分、音羽さんの父親だ。


「おら、さっさと飯作れヤ。俺は腹が減ってるんだよ」

「は、はい……」


父親だと思われる男性に言われて、音羽さんはどうやら夕食の準備をするみたいだ。

……ちょっと待て、どこか様子がおかしくないか?


「チンタラしてねぇで、さっさと食事作れってんだよ!!」

「キャア!」


バシン!!


「!!」


盗聴器より思い切り聞こえてきた、空気を斬り裂くような音。

間違いない……音羽さんが頬を殴られたような音が、僕の耳に聞こえてきたのだ。













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