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8-1 希望を落とした少女 その1

バシン!

また頬を殴られる。


「そんな顔で俺のことを見るな!あの女の面影が残った顔で、俺の顔を睨むんじゃねえ!」

「……」

「なんだよ……なんか文句あるのか?だったら正直に言ってみろよゴラァ!!」


ドゴッ!


「う……」


今度は鳩尾を殴られる。

息が……出来ない。


「なんだなんだその表情は?あの日に俺のことを捨てたあの女にそっくりな表情してんぞ!!お前は俺の娘だろ?だったらうだうだ言ってねぇでさっさと食事の準備くらいしろってんだ!どうせお前は、それくらいしか頼りにならないんだからな!!」

「……はい」


抵抗は、することが出来なかった。

こうなってしまったのも、お母さんがお父さんのことを捨ててしまったからだ。

何でも、他に好きな男性が出来てしまったらしい。

つまりは……不倫による離婚。

その後から、お父さんは変わってしまった。

何かが吹っ切れたかのように、私に暴力を振るう始末。

私には、抵抗するだけの力はない。

だから、毎日こうして……いつか優しいお父さんに戻ってくれるのを、待っているだけ。










第八のカケラ 希望を落とした少女










ここ最近、生徒会室に来て気付くことがあった。

それは……、


「……どうしたんだ水島?何だか元気がないようにも見えるけど」

「へ?……なんでもないですよ?別に特別なことは、何も起こってなんか……」

「本当に大丈夫なの~?最近音羽ちゃん、心から笑えてないような気もするけど~?」

「本当に大丈夫ですってば……そこまで心配しなくても」


会長と歩美先輩が心配するのも納得がいく。

何故なら……音羽さんから、笑顔がなくなったからだ。

そんなことを言うと極端過ぎるかもしれない……強いて言うなら、心から笑えなくなってしまっている、と言った所だろうか?

今でも、音羽さんが笑う時はある。

けど、それらはすべて愛想笑いか、無理矢理作られた笑顔のような気がしてならなかった。

それに……。


「疲れているのか?顔がやつれているようにも見えるが?」

「……寝不足なのかもしれません」


吉田先輩の言葉に、やはり音羽さんは愛想笑いを浮かべて答える。

……心なしか、目にも若干光が見えないような気がした。


「何か困ったことがあるなら言ってね?何でも相談にのるから……」

「……ありがとう、健太君。その気持ちだけで、嬉しいよ」


ニコッと、音羽さんは笑う。

力なく……心から笑えていない、その表情で。


「……それでは私は、これで帰らせて頂きますね」

「ええ……また明日会いましょう?」

「……はい」


真鍋先輩の言葉にも、どこか上の空と言ったような感じで音羽さんは答える。

……どうしてだろう。

このまま音羽さんが家に帰ったら、次の日にはまた音羽さんが疲れた表情を見せるのではないかと思ったのは。

……このまま音羽さんを放っておくことなんて出来ない。

……かといって、今の音羽さんに近づけば、拒絶されてしまうだろう。

だから僕は……決心した。

音羽さんには悪いけど……尾行をさせてもらおう。

なんとしても、音羽さんがこんな状態となっている、原因を探ろう、と。
















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