0-8 Refrain
う、う……。
最近この世界に帰って来るときのタイミングが分からなくなってきたような気がする。
けど、帰ってきたということは、その人の願いが叶ったと考えてもいいのだろう。
つまり……マコの願いは、叶ったということになる。
「目覚めたか?」
―――この声は、マリアさん?
マリアさんの声が頭に響く。
だが……何故かは知らないけど姿は見せない。
本当に……どうしてなんだろう?
―――どうしてマリアさんは、姿を見せないの?
僕は気になって、そう尋ねる。
しかし、返答はなかった。
……返答がない?
どういうことなのだろうか?
「……木村健太。そなたに言っておかなくてはならないことがある」
―――え?
突然声をかけられて、僕は驚く。
だが、話を聞かないことには始まらない。
だからマリアさんの話を聞くことにした。
「この世界に散らばっている世界のカケラの数は、もう残り少なくなってきた。今までに七人もの人のカケラを巡ったわけだ」
―――うん。
「そして、残りのカケラの数は―――後六つ」
……ちょっと待って。
後六つ?
一体、誰のカケラが残っているというのだろう?
「そのうちの五つは、カケラの世界を現す人物の姿が写し出されている。だが、最後のひとつのみが、誰の姿も写っておらぬのだ」
―――誰の姿も写っていない?
どういうことだ?
普通なら、その世界のカケラには、誰かの願いがこめられているため、誰かしらの姿が写っているはずだ。
けれど、それがない。
これは果たして……どういうことなのだろうか?
「気にしても仕方ないのは確かだ……だから、そなたはとりあえず、カケラを選ぶがよい」
―――うん。
気にはなる。
だけど、気にしていても仕方がない。
だから、僕はカケラを選ぶことにした。
「……そんな表情をするな。我とて少しばかり気分が悪い」
―――分かってるんだけど、何だかちょっとね。
そういいながら僕が選んだカケラには……。
―――え?
どうしてか、悲しい表情を浮かべている音羽さんの姿があった。
「……どうしたのだ?」
―――なんでもないよ。
どうして、音羽さんがそんなにも悲しそうな表情をしているのだろう?
どうして、笑顔じゃないのだろう?
……なんで、なんだろう?
気になった僕は、この世界に入り込むことにした。
「決めたのか?」
―――うん。
返事する。
と同時に、念じる。
僕は……この音羽さんの悲しみの正体を知りたい。
だから、僕をこの世界に連れて行って欲しい。
……そう、僕は願ったのだった。