7-6 貴方にささげるLove song その6
「……やっぱり」
そうだったんだ。
マコは、僕と初めて出会った日からのことを思い出しながら、自分の本当の気持ちを込めながら、歌にしていたのか。
けど、何で最後の言葉が、『どうかボクの想いが、貴方に届きますように』という感じの言葉で終わるのだろうか?
ちょっと疑問に思ったが、
「……あのね、健太君。大事な話があるの」
「大事な話?」
なんだろう、一体。
マコが僕にする大事な話とは、一体……。
「……あのね、健太君。健太君はまだ、ボクの本当の気持ちに気付いては……ないよね?」
「マコの……本当の気持ち?」
「……うん」
マコの本当の気持ち。
確かに僕は、マコが僕に対してどんな想いを抱いているのかを知らない。
けれど、僕はマコのことを親友だと思っている。
マコも間違いなく親友だと思ってくれていることだろう。
けれど、もしマコが、僕に対してそれ以上の感情を持っていたとしたら……。
「ボクは……ボクはね、その、健太君のことが……」
「……」
口は挟まない。
ただ僕は、黙ってマコの次の言葉を待つのみだった。
そして、しばらく迷った末に、マコは言った。
「ボクは……健太君のことが、好きなの!」
「……え?」
頭に衝撃が走ったかのような感覚を感じた。
……え、マコが僕のことが好きだって?
今のは空耳だったのだろうか……いや、そんなことはない。
この耳で、間違いなくマコの言葉を聞いたのだ。
空耳であるはずがない。
するとマコは、本当に僕のことを……。
「優しい所が好き!強い所が好き!いつも見せてくれる笑顔が好き!他人想いな所が好き!全部全部大好きなの!!」
「あ……えっと」
返答に困ってしまう。
次から次へと出てくるマコの言葉に、僕は思わず言葉を失ってしまう。
マコは、顔を真っ赤にさせて、尚も言葉を続けた。
「ずっと前から好きだった!初めて出会って、ボクのことを助けてくれた健太君のことが、とっても好きだった!ボクは健太君に一目惚れだったんだ!!」
「……」
そこでマコは、言葉を区切る。
……そっか、マコがそんなにも前から僕のことを想ってくれていたなんて。
それなのに、どうして僕は、マコの気持ちに気付いてあげることが出来なかったのだろう―――!!
「……ごめん、マコ。君の想いに気付いてあげられなくて」
「……ううん、もういいんだ。こうして口で言えただけでも、ボクは嬉しいよ」
そう言ってマコは、笑顔で僕のことを見つめてきた。
……いつものような笑顔ではない、少し涙が含まれた、笑顔で。
「……マコ!」
「ひゃあ!」
(ギュッ)
僕は思わず、マコのことを抱き締めていた。
……まるで壊れ物を取り扱うかのように優しく、しかし手放さないように力強く。
「……ごめん、痛かった?」
「……ううん。いきなりで驚いただけだから。もう少しだけ、このままの格好でいさせて……」
僕とマコは、しばらくの間抱き締め合っていた。
この部屋には……いや、この世界には、僕とマコしかいないような感覚に襲われていた。
いつか僕は、マコの隣で、二人きりのコンサートが開かれる日が来るのだろうか?
僕の意識は、そんなことを考えながら、急速に失われていったのだった。
『貴方にささげるLove song』の全体の歌詞は、またの機会に載せたいと思います。
これにて、雛森マコ編は終了です。