7-5 貴方にささげるLove song その5
「温かな日射しが差し込む海で、ボクと貴方は出会った」
「……この歌は」
多分、僕の想像通りだとしたら、この歌は……。
「……離れ離れになっても。私は追い続けた。あの日交わした約束果たすために」
……やっぱりそうだ。
この曲は、僕とマコが出会った時からの歌だ。
マコは、僕との出会いの日々を歌にしたというのか……ちょっと嬉しいかもしれない。
「いつしか貴方に届いて欲しい。私のこの想いが」
「「「「……」」」」
先ほどまでの大歓声は何処へ。
みんなマコの歌声に聞き惚れていた。
……僕も、マコの歌声を聞いてしまったら、何も言葉を返せなくなってしまった。
会場内には、マコの歌声とバックミュージックのみが鳴り響く。
それ以外の音など、この場所には存在しなかったのであった。
「……貴方に出会えて本当によかったと、ボクは心から思っていました」
……僕とあの海で会話したこと。
僕とあの海で約束したこと。
それらの記憶の一つ一つが、記憶の底に眠っていたのが引きずり出されるかのように湧き出てくる。
そのまま目を閉じてマコの歌声を聞いていたら、沖縄の海での楽しかった時間が思い出されるかのような感覚を感じることが出来た。
ああ……マコと出会えて、本当によかったなぁ。
僕も、マコと同じ想いを抱いていたようだ。
「……ボクの想い、どうか貴方に届いて……」
そして歌は、マコの懇願にも似た言葉で締めくくられ、少しばかり音楽が流れ続けた後に、
(ペコリ)
マコは観客達に、一礼。
同時に、観客達からは、大歓声と共に、
(パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ)
多くの拍手が鳴り響く。
今までとは少し違う、大人っぽいマコを見て少し戸惑っている人もチラホラと見受けられたが、それでもマコの歌を否定する人なんか誰一人としていなかった。
しばらくの間鳴り響く拍手を聞きながら、マコはステージから立ち去って行った。
目には……一筋の涙を浮かばせて。
「凄かったね、マコ!」
ライブの後、僕は係員の人に呼び止められ、マコの控え室に来ていた。
ライブが終わった後ということで、若干汗をかいている様子のマコが、椅子に座っていた。
その表情は、やりきったという満足からのものであった。
「ありがとう、健太君。最後の歌まで聞いてくれて」
「どういたしまして……それでマコ、質問があるんだけど」
「ん、何?」
不思議そうな表情を見せるマコ。
……けれど、僕は内心、実は僕がマコにこの質問をすることが、本人は分かっているんじゃないかと、少し思っていた。
「……あの曲、僕とマコが初めて会った日からのことを描いた歌だった……よね?」
マコは、少し答えるのに躊躇って、それから……。
「……うん」
一言、そう肯定した。