7-3 貴方にささげるLove song その3
マコから作詞の話を聞いて、およそ一ヶ月後。
いつの間にか僕の頭の中では、そんなことは忘れ去られていて、そして僕は、いつも通りの日常を過ごしていた。
季節は秋。
まだ暑さが若干残っていて、生徒の大半が夏服で来ていた。
「でよ……今度の休日はどうするよ?」
「う~ん、今のところは特に用事は入ってないけど」
「それなら、いつものメンバーで何処かに出掛けないか?」
「……何処かって?」
教室の一角で、僕達はいつもと同じように会話をしていた。
僕とかなえさん、吉行に美奈さん、ミサさんに大貴、そして夕夏さんの七人だ。
「私は遠慮するわ。うちの方が忙しいから……」
夕夏さんは、右手を振り、否定の意を表す。
後で理由を聞いてみたところ、自分の父親の会社でゴタゴタがあったから、そのことで家は忙しいのだそうだ。
「私も……吹奏楽部で、演奏会の準備をしないといけないから」
そう言ったのは、かなえさんだ。
かなえさんは、もうすぐ吹奏楽部での演奏会に参加する予定なのだ。
だから、今度の休日は部活に参加するのだという。
とすれば、二ノ宮さんも駄目と言うことに繋がるか。
あ、大貴もそのことに気付いて残念そうな表情を浮かべている。
「私も、その日はゲームの発売日だから、無理よ」
「相変わらずな理由ね……あ、私も無理よ」
美奈さんは、およそ理由と言うべきか迷ってしまうようなことで、無理(発言自体は想定内の範囲だったけど)。
ミサさんも、どうやら予定が入っていて駄目みたいだ。
「とすれば、後はお前だけだ!」
「う~ん……」
確かに、そうなると僕だけ……って、まだ大貴が残ってるじゃないか。
「……俺は、精神的ショックを受けてるから、無理」
「そこまでショックなのかよ。二ノ宮が来ないのが……」
思わず吉行が呆れがちにそうツッコミを入れてしまうほど、今の大貴からは魂が抜けているようにも見える。
……最近大貴の、二ノ宮さんへの想いがかなり強くなっている気がする。
「健太君!」
「ん?マコか。おはよう」
と、そこに元気よくやってくる女の子が一人。
いつも一緒に勉強している、マコだ。
笑顔の中には、何らかの決意が見られるような気がした。
「おお、マコちゃんがいたか!今度の休日は暇かい?」
「……ごめん、海田君。今度の休日は、ボクは忙しいんだよ」
吉行、全滅。
もはや体が真っ白になっていて、完全に燃え尽きてしまったようだ。
「……あのね、健太君」
「……どうしたの?急に改まったりして」
先ほどから、マコの様子が少しおかしい。
何だろう……何かを渡されるような、そんな感じがする。
「健太君に……今度のライブを見に来てもらいたいと思ったから……その……えっと……はい!」
「これは……ライブのチケット?」
マコから渡されたのは、ライブのチケットだった。
……けど、この一枚だけだ。
他の人は誘わなくてもいいのだろうか?
「……大事な話もあるから、一人で来てね。それじゃ!」
そう言うや否や。
マコは慌てて自分の席に戻る。
……僕の右手には、相変わらずチケットが握られたままだった。