7-2 貴方にささげるLove song その2
「ボクが……歌を作るの?」
「ええ。そろそろ自分で作った歌が歌いたくなってきた時期でしょ?なら、頑張ってみたら?」
そんな一言が、ボクに降りかかってきた。
歌詞を自分で書くのか……ボクにそんなこと出来るのかな?
「何不安そうな表情浮かべてるのよ。貴女は歌手なのよ?」
「歌手であることと詞を書くことは微妙に違うことのように聞こえるのですが……」
「まぁ、とにかく。ものは挑戦よ。やってみるだけやってみせたらどうなのよ?無理そうなら、私に言ってくれればいいから」
「……分かりました。なんとか頑張ってみます」
やがてボクは、そう返事をして、家に帰った後で早速取り掛かってみたのだけど、
「……う~」
書けない。
最初の部分から、もっと言うなら、歌い出しすら思い浮かばなかった。
「……貴方に言いたい、いや、違うなぁ……」
……歌詞を書くことがこれだけ難しいことだったなんて……。
いつもボクの為に歌詞を書いてくれてる人に感謝しよう。
「……あ~駄目だ~」
結局、何時間か考えてみたけど、いい歌詞が思い浮かぶことはなかった。
……今日はもう寝よう。
「ふぅ~」
ベッドにダイブするかのように飛び込んで、やはり考えるのは歌詞のことだった。
「……難しいなぁ」
健太君への想いを描くにしろ、どういう風に書けばいいんだろう?
あまりに直接的過ぎても、駄目だよね……?
次の日。
僕が学校に行ってみると、こんな朝早い時間だというのに、既に先客がいた。
机の上に白紙の紙を置き、右手でペンを持っている。
ゴミ箱には、今まで何かを書いたらしい紙が結構な量を占めていた。
一体いつからこの教室に来ていたというのだろうか?
「……マコ?」
「ひゃあ!」
(ビクッ)
僕が声をかけてみると、可愛らしい悲鳴をあげて、マコが体をびくつかせていた。
……そんなに驚かなくても。
と言うか、驚かした記憶はないんだけど。
「こんな朝早くから何をしてるの?」「……今度の新曲の歌詞を作ってるんだ」
「え?今までマコが歌詞を書いてたの?」
「ううん、今回が初めてだよ……だから、何を書けばいいのか分からなくて……」
成る程。
マコは歌詞が出来上がらなくて、困っているというわけか。
「どんな感じの歌にするかは考えてるの?」
「……うん、一応は」
どうやらマコは、どんな感じに仕上げるかは一応頭に入っているらしい。
けれど、肝心の内容の方が追い付いていないようだ。
……歌詞を書くなんて経験、僕もないからなぁ。
何かアドバイス出来るようなことは……。
「……マコ、あまり深く考え過ぎてるんじゃないかな?」
「え?」
「自分の抱えている想いを、そのまま歌にぶつける……それでいいと僕は思うよ」
「自分の想いを……ぶつける」
……僕が言うべき言葉ではないと思うけど。
けれど歌というものはそういうものだと思うから。
「……ありがとう。ちょっとだけ、頑張れる気がしたよ」
「あ、うん……頑張ってね」
「うん!」
最高の笑顔を僕に向けて振りまくマコ。
アイドルとしての顔ではない……『雛森マコ』としての顔だ。
そしてすぐにマコは歌詞作りに取り掛かる。
邪魔にならないように、僕は自分の席に座り、窓の外の青空を見ていることにした。