7-1 貴方にささげるLove song その1
伝えたい。
いや、ボクはこの想いを伝えているはずだ。
けど、あの人にはボクの想いが届かない。
鈍感なあの人には、ボクの想いが伝わりにくいのだ。
どうすればボクは、あの人にボクの想いを伝えることが出来るのだろう?
どうすれば……どうすれば……。
第七のカケラ 貴方にささげるLove song
ボクの名前は雛森マコ。
数年前に売り出したばかりの、新人歌手だ。
けれど、今では安定した人気を得ている……らしい。
詳しくはよく分からないけど。
けどボクは、売れているとか売れていないとか、そんなことは関係ないと思っている。
楽しく歌い、ボクのファンでいてくれる人達に歌を歌う。
それだけで、十分ボクは幸せなんだから。
歌手というのは、売上を気にするものではないと思うんだ……給料が入らないと生活できないのも事実だけど。
そんなボクには、ある一つの悩みがあった。
それは……。
「自分の想いを伝えているはずなのに、伝わらない、か」
「……はい」
マネージャーである水島来栖さんに、ボクは相談をした。
それは、ボクが健太君に想いを伝えているはずなのに、なかなか伝わらないことだ。
……もう何年も前から、ボクはこの想いを胸に秘めている。
歌手になったのも、歌手になって有名になれば、健太君に会えるかもしれないという期待が、最大のきっかけだったから。
もちろん、ボクだって歌手になりたいって夢を小さい時から持っていた。
あの日、沖縄の海で健太君と『約束』を交わした時は、心から歌手になりたいって思ってたからだ。
けど、ボクが沖縄から帰ろうとした時に……飛行機の墜落事故にあった。
ボクは、お父さんとお母さんに守られて何とか命を救われたけど、代わりにボクは、大切な存在をなくしてしまった。
後悔の念よりも……悲しい想いしか残らなかったあの日。
健太君に再会できたことにより、少しは悲しみを和らげることができたのも、また事実だった。
だからボクは……健太君のことが余計に好きになってしまった。
「けど、マコちゃんの想いは、なかなかその彼には伝わらないと」
「……その通りなんです」
全部話し終えた後で、水島さんはそうまとめてくれた。
まとめてみると結構簡単なように聞こえるけど、実際はそう簡単に片付く問題ではない。
「……困ったわねぇ、といいたいところだけど……」
「何か方法があるんですか?」
何かを思いついたような表情をして、ボクのことを見る水島さん。
……けど、一体何を思いついたのだろうか?
「マコちゃん、歌詞を書いたことはある?」
「え?す、少しだけなら……」
「作曲は?」
「出来ないことはないですけど……」
一体何を思いついたのだろう?
ボクはこの時点では、水島さんが何を言っているのか分からなかった。
……けれど、次の水島さんの言葉で、ボクは完全に分かったのだった。
「マコちゃんが、次の新曲を作成すればいいのよ。その男の子の為にも」
ボクは多分、人生の中で二番目の驚きの声をあげたと思う。




