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0-6 Loneliness heart

う……ん。


「目覚めたか?」


―――あれ、いつの間に僕は戻ってきたんだ。


僕は、いつの間にかこの世界に戻ってきていたらしい。

いつも感じていたようなものが、今回は感じられなかったような気もする。

……これも、マリアさんの力が戻ってきている証拠なのか?


「あの者の願いは……『負けた試合に勝ちたかった』というものだったのだな」


―――負けた試合?


僕は、マリアさんが言ったその言葉が少し気になった。

尾崎さんは、あの試合で勝ったではないか。

……それなのに『負けた』とはどういう意味なのか?

考えようとして、すぐに気付いた。


―――前にも同じ試合をやっていた?


「うむ、その通りだ。この試合は、そなたが知らぬ間に行われていた試合であり、その日は尾崎早織の失敗により、試合に負けている」


―――尾崎さんの、失敗?


「……実はな、最終回までの展開は、元の世界と同じなのだよ」


―――え?


つまり、あの試合は、途中までは今までの出来事を再現していたに過ぎなかったということか。

なら、最終回における尾崎さんの打席は―――?


「元の世界でも、あの場面で打席に立ったのは、尾崎早織だった。しかし、プレッシャーに勝てず、結果はダブルプレー。そのまま試合も負けてしまった。最も、この世界でも試合には勝っておらず、引き分けに終わっておるがな」


―――そうだったのか。


知らなかった。

僕が知らない内にこの練習試合は行われていて、しかも本来は負けている試合だったなんて。

そこに、『僕』という不確定要素イレギュラーが現れたことにより、未来は変えられたということか。


「だが、そなたが現れるのみでは、その未来は変えられなかっただろうな」


―――え?


「そなたが尾崎早織に言葉を投げ掛けたからこそ、尾崎早織はホームランを打つことが出来たのだ。何か行動を起こさぬ限り、その未来における彼女達の『願い』は叶わぬのだよ」


……忘れていた。

そういえば、僕は単にカケラの世界に入って、『その世界の木村健太』の代わりをしているに過ぎないのだった。

だから、『僕』が特に何も意識することなく、ただその世界にいるだけだったら、その世界に置ける確定された未来を歩むだけなのだと言うことを。

……あれ、こんな話を聞いた覚えはあったか?


「……我の心の言葉が、流れたのか」


―――え?


「……次のカケラを選ぶがよい」


マリアさんの言葉が気になったが、僕はマリアさんに言われて、次のカケラを選ぶことにした。


―――これかな。


そう言って僕が選んだカケラには、杏子ちゃんの姿が写っていた。


「そのカケラで……いいのだな?」



(コクッ)



返事を言葉で返さず、首を縦に頷かせることでマリアさんに伝えた。


「なら……やるべきことは、分かっておるな?」


―――うん。


僕は目を閉じ、念じる。

右手の中に収められたカケラが、強くて、しかし寂しい光を発して、僕の体を包んでいった。
















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