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5-5 Winning shot! その5

「ついに尾崎さんの番か……」

「尾崎?尾崎って、確か球技大会の日に……」

「うん、そうだよ」

「へぇ……そんな人と知り合いになっていたとは。さすがは健太だね」

「……それ、どういう意味?」


何やら含みのあるもの言いで、和樹は僕に言ってきた。

なんとなく、僕のことをけなしているような……。


「そんなことはないって。僕はただ、純粋に健太の凄さに驚いてるだけだって」

「凄いのか……僕は?」

「うん、ある意味凄い」


ある意味ってどういうことだよ……。

そんなことを言っている内に、尾崎さんがバッターボックスに立っていた。


「……ここで、打つ。打って、次のバッターに繋げるんだ!」


ノーアウトからの先頭打者の仕事は、大きな当たりを打つことではないらしい。

試合が始まる前に、尾崎さん本人が言っていたことだ。

ホームランを打つことよりも、確実に点を稼ぐために、ボールを前へ転がすことが先決らしい。


「……」


緊張の糸が張り巡らされる。

まずは……第一球。


「……!」


尾崎さんは、一瞬バットを振りそうになったが、カウントはボール。

内側ギリギリのところに、ボールは収まっていた。


「今のを見るとは……やるわね」


キャッチャーの表情からは、そんな感情が読み取れるような気がした。

続いて第二球。


「これなら……どう!」

「……打てる!」


尾崎さんは目を見開き、その球を打つためにバットを振った。

ボールは、ど真ん中に入ろうとしている。

すなわち、このまま尾崎さんがバットをボールに当てることが出来れば……。


「長打が期待出来る、というわけだね。でも……果たしてそうかな?」

「え?」


和樹が何かを呟きかけたその時だった。

パァン!

強烈な音が聞こえた……しかしその音は、バットから奏でられたものではない。

ミットにボールが収まることによって発生する音だ。

……あれ?

ボールは真ん中に来ていたはずだ。

そして、尾崎さんもまた、その場所に合わせてバットを振っている。

しかし、ボールは前に飛ばず、ミットの中にある。


「ストライク!」

審判が高々に宣言する。

……尾崎さんは今、空振りしたというのか?


「健太……今の球が、ど真ん中に来るボールだと思ったろ?」

「……うん、そうだけど」


僕は、突然和樹が尋ねて来たのを受けて、少し間を開けて質問に答える。

すると、和樹は『やっぱり』と呟いた後に、


「あの球は……ストレートなんかじゃない」

「……?」


ストレートは……確か真っ直ぐに投げる基本中の基本球のことだよね。

でも、軌道はまさしく真っ直ぐだったような……。


「ソフトボールって、下から上に投げるだろ?つまり、野球とは違って、上から下に振り下ろすのではなく、下から上に振り上げる的なところがあるのが、ソフトボールなんだよ」

「……で、それとこれと、どんな関係が?」


和樹の言いたいことが今一理解出来ない僕は、和樹にそう尋ねた。

すると、


「ライズボール……って名前だったと思うけど、ソフトボール独特の変化球で、打者から見てボールが浮き上がるように変化するんだ」

「……そんな球が?」

「うん、実際にあるんだよ」


……それじゃあ、ほとんど対応の試用がないじゃないか。

一体、どうやって打てばいいんだ?


「それは……僕達が分かる範疇でもないし、ソフトボールの選手が一人一人、もしくは全員で決める感じになると思うけど」

「……あっ!」


長話をしていたら、尾崎さんはすでに三振した後だった。

悔しそうに、地面を蹴っているのではないかと思うほど、勢いよくベンチに戻って行った。

……この練習試合、一体どうなるのだろうか?
















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