5-3 Winning shot! その3
午前10時。
流石にベンチに座っているわけにもいかず、僕は来客用に設けられた席に座ることとなった。
練習試合というのもあってか、座っているのは親ばかりだ。
中には僕のように、知り合いが試合に出てるからやってきたって感じの人もいなくもないが、数では親よりは負けていた。
「整列!」
(ザッ)
審判の声に合わせて、両チーム共にベンチからホームベース前に集合する。
そして、ほとんどズレが生じないような真っ直ぐの線をイメージさせるかのように、横一列に並んでいた。
「これより、四季高校対大木高校の練習試合を行う!先行は大木高校。一同、礼!」
「「「「「お願いします!!!」」」」」
全員分の声が重なり、それが試合開始の合図となった。
「先行は尾崎さんの学校か……」
「果たしてどっちが勝つんだろうな?」
「さぁ。それはちょっと分からない……って、え?」
突如僕の横側から声が聞こえてきた。
しかも、聞き覚えのある声だ。
この声は、もしかして……。
「よっ。健太」
「やっぱり……和樹か!」
僕の横に座ったのは、四季高校の生徒でもあり、中学の時の同級生でもある、眞鍋和樹であった。
「今日はどんな用で来たんだ?ソフト部の練習試合を見に来たにしろ、ここに健太の知り合いはいたっけ?相馬学園の選手が出てるならまだしも、愛だって出てないけど?」
「大木高校の方に、僕の知り合いがいるんだよ」
「……中学の時の友達?」
「ううん。球技大会で知り合った人だよ」
「なるほどね……」
僕がそう答えると、和樹は納得したような表情を浮かべた後に、僕の顔を眺める。
そして、
「健太の特殊スキルを発動させた結果、と……」
「特殊スキルって何さ?」
意味が分からないって。
和樹もとうとう訳の分からないことを口走るようになったのか?
「分かってないのは本人だけ、か……本当に健太は昔から鈍感だよなぁ」
「和樹にだけは言われたくない」
和樹こそ、女性関係で言ったら結構鈍感な部類に入ると思うけどなぁ……。
「五十歩百歩、だな」
「「え?」」
後ろからそんな声が聞こえてきたような気がしたんだけど……空耳、かな?
「五十歩百歩、ね……やっぱり僕も、鈍感な部類に入るのかなぁ?」
「……多分ね」
「まぁ……健太も、だよね」
「……うん、もう認めるよ」
何故だか、今の僕は和樹の言葉に納得出来てしまうような気がした。
何故なら、僕が把握してなかったところで……何なんだ?
あれ、この先の言葉が、浮かびそうで浮かばない。
僕は……何を言おうとしたんだ?
……まぁいいや。
思い出せないということは、多分そこまで重要でもないということなのかもしれないから。
「……お。そろそろ攻撃が始まるみたいだぞ」
和樹の言葉を聞いて、僕は今まで考えていたことを、一旦リセットした。
そして、始まった試合を見ることにした。