5-1 Winning shot! その1
そして私は気付いた。
会わない時間が長引くにつれて、私の胸が、張り裂けそうに成る程痛くなっていることに。
気付いてしまったが最後。
……私のこの想いが、止まることはない。
止まっていた時間は、動き出す。
同時に、私の想いも、前へ前へと動き出した。
第五のカケラ Winning shot!
僕は今日、サッカー部の練習試合の為に、大木高校に来ていた。
この日の試合は絶好調だった。
僕達が放つシュートは、結構ゴールの中に入り、気付けば5-3という試合だった。
……ここまでの試合は、ひょっとしたら初めてなのではないだろうか?
「いやぁ~今日の試合は絶好調だったな!木村もハットトリック決めるし!」
「そ、そんなことないですよ……それだったら、先輩のアシストだって凄かったじゃないですか」
「そうか?……ヘヘッ。ありがとよ」
こうして僕達は互いを讃えあっていた。
そんな時に。
「……ん?」
玄関付近に、僕はある人物を発見した。
長くて緑色の髪……あれはもしかして。
「どうした木村?何か見つけたのか?」
「ちょっと知り合いを見つけたので……先輩達は先に帰っていても大丈夫ですよ」
「そうか?……なら、そうさせてもらうか」
先輩達か校門に向かって歩いていくのとは逆方向。
僕は、校舎へと繋がる玄関の方に歩いていった。
そして、その人物の前に立ち、一言。
「えっと……久しぶりだね、尾崎さん」
「あなたは……?」
覚えているのかいないのかは分からないけど。
とりあえず尾崎さんは僕の言葉に返事を返してくれた。
「僕だよ僕。木村健太」
「……ああ。ファールボールが飛んできた時に守ってくれた人ね」
そこまで覚えていてくれたとは……。
僕としては嬉しい限りだよ。
「それで、今日はどんな用でここに?」
尾崎さんは僕にそう尋ねてきた。
僕は、今日ここに来た理由をそのまま伝える。
すると、
「成る程……サッカー部の練習試合に。レギュラーとして出ていたということは、相当の実力を持っているということよね?」
「そんなことはないと思うけどな……けど、褒められて悪い気もしないかな」
これは褒められていると考えてもいいんだよね?
それなら、素直に喜べるし……。
「私は……ちょっとね」
「ん?」
「……何でもないわ」
今、何かを言いかけたような気もしたんだけど……ま、いっか。
「尾崎さんは何部に入ってるんだっけ?」
「ソフトボールよ……そして、今度の日曜日には、四季高校との練習試合があるの」
「本当に?僕も行ってもいいかな?」
尾崎さんの試合か……。
僕も興味があるんだよね。
「来てもいいと思うけど……私、その試合でいいプレーが出来るかどうか不安で」
「……そんなことは、気にしてはいけないと思うよ」
「……え?」
意外そうな表情をする尾崎さん。
構わず僕は言葉を続ける。
「完璧な人間なんて、誰もいない。人間として生きている以上、僕達は必ずどこかでミスをする。大切なのは、そのミスを次に生かすこと」
「ミスを……次に生かすこと」
「うん、そうだよ」
「……」
尾崎さんは、少しの間黙る。
そして、
「ありがとう。何だか気分が軽くなったわ」
「どう致しまして……それじゃあ、僕は行くね」
時間も押していることだし、僕は自宅に帰る為に走り出す。
「あ……」
尾崎さんが何かを言おうとしていた気がしたが、僕は気のせいだと思い、そのまま大木高校を出た。