1-3 ~if~あの時告白が出来ていたとしたら その3
今日の授業も終わって、放課後になった。
僕はサッカー部に所属しているので、向かうのはサッカー部の部室だ。
スパイク、ユニフォーム、タオル等、部活に必要なものを持ってきているかを確認し、無事に持ってきていることが判明した。
「……行くか」
カバンを持って、教室を出ようとする。
その時に、
「おい健太!」
「ん?どうしたの吉行?」
まだ教室に残っていた吉行が、僕に向かって話しかけてくる。
何だろうと思い、僕はその言葉に答えた。
すると、
「楽しみにしてるからな、日曜日の報告!」
「……吉行、今日はまだ月曜日だってこと知ってるよね?」
「もちろん。それがどうかしたか?」
「随分先の話になると思うんだけど……」
デートすることが決まったと言っても、あと六日は後の話だ。
「分かってるっての。けど、こういうのは早め早めにって言うだろ?」
「言わないよ……」
吉行の、少し筋が違う話を聞いて、僕は少し呆れる。
同時に、吉行らしいなとも思った。
「それじゃあ僕はそろそろ行くね……」
「おう!部活頑張れよな!」
朝は部活やめればいいとか言ってたくせに……。
本当に吉行らしいや。
「……あ、健太!!」
「うん?」
今度こそ教室を出ようとした時、またしても僕は吉行に呼ばれる。
今度は……ふざけたような笑みではなく。
純粋な笑みを浮かべて、
「……メールしてみて、よかったろ?」
「!!」
……気づいてたのか。
久々のデートだということに対して、僕が喜んでいることに。
さすがは吉行だ……僕の思ってることが分かっているようだ。
「……ありがとう、吉行」
「いいってことよ。そのかわり、今度食堂で何か奢ってくれよ」
「無料じゃないわけね……」
「冗談だよ。けど、どんなことが起きたのかはきちんと報告するように。いいな?」
「分かったよ。それで済むならいいよ。のろけ話を聞かせてあげるから」
「言うようになったねぇ?健太君?」
「僕だって言い返す時はするさ」
……。
僕達の間に静寂の時間が訪れる。
しばらく経過してから。
「「……プッ!!」」
二人は同時に吹き出した。
そして、
「「ワハハハハハ!!」」
二人同時に笑いだした。
何が面白かったのかは知らないが、とりあえず僕達は笑った。
そうすることで、更に気分は良くなった。
「さて、気分が良くなったところで……そろそろ部活に行こうかな」
「おう!引き留めたりして悪かったな」
「いいって。吉行のおかげで日曜日にデートに行くことになったんだから」
ある意味では、吉行と大貴が僕のことを話していなければ、こんなことにはならなかったのだから。
……後で僕は大貴にもお礼を言わないとならないな。
「んじゃ、部活頑張ってこいよ!」
「うん!じゃあまた明日ね!」
「おう!また明日な!」
そう挨拶を交わした後、僕は教室から出て、部室に行くために廊下を走る。
……日曜日が楽しみだ、早く日曜日にならないかな。
けど同時に、僕は何か大切なことを忘れている気がするんだけど……まぁ、忘れる程のことなら、忘れてもいっか。
次回、ようやっと愛が登場する……かも(おいおい)。