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4-7 彼女の選択 その7

……え?

今、美咲は何を言った?

僕のことが……好き?

兄としてではなく、一人な男として、僕のことが、好き?

……確かに僕達は兄妹関係にあったが、今やもう家族ではない。

そして、血が繋がってない以上、僕達は結婚しようと思ったら出来る間柄ではある。

でも、それでも……。

例えそれが美咲の『願い』だったとしても……。


「……ごめん、美咲。その願いだけは、叶えてあげられそうにない」

「……え?」


美咲は、驚いたような声をあげる。

……この世界が、みんなの『願い』によって構築されている世界だとしても、僕はこの願いだけは、どうしても叶えるわけにはいかなかった。


「……確かに僕は美咲のことは好きだ。美咲が僕のことが好きだって言ってくれたことも大変嬉しい……けど、それまでだ」

「それまで……?」

「……今まで兄妹の関係を保ってきた僕にとって、美咲は大切な妹なんだ。これは今も昔も変わっちゃいない、確かな思いなんだ。だから……僕は美咲のことを、それ以上の目で見ることは出来ない」


美咲は僕のことが好きだから、木村家を出て月宮家に行くことを決めたと言った。

けど……僕は美咲のことを、『月宮美咲』としてではなく、『木村美咲』としてしか見ることが出来ない。

だって……あの日からずっと、僕達は兄妹だったのだから。

例え血が繋がっていなくても、互いの考えていることや相手の気持ちが理解出来なくてすれ違うことがあったとしても。

僕は……『木村美咲』のことが好きだったから。

明るい笑顔を浮かべていた、僕の妹のことが好きだったから。

だからこそ、僕はその選択肢をとることは出来ない。

『月宮美咲』のことを、『好き』になることは出来たとしても、それは『Love』以下となる。


「だから……ごめん、美咲。僕は、美咲の気持ちに答えることは、出来ない」

「……」


美咲は、黙り込んでしまう。

僕自身も、この後どんな言葉を返せばいいのか分からなくなって、黙ってしまう。

しばらくの間、僕と美咲の間に、いいようもない空気が流れる。

やがて、この空気の中、最初に言葉を発したのは、


「……健太さん」


美咲だった。

そして美咲は、こう言ったのだった。















「……ありがとう、お兄ちゃん」















「……え?」


美咲のその言葉と共に、空にヒビが入ったのが、目からも耳からもその情報が入ってくるのが分かった。

……ありがとう?

それに、今、『お兄ちゃん』って呼んだか?


「私の願いは、もう叶った……協力してくれてありがとね、お兄ちゃん」


何時もの笑顔で、美咲はそう言ってみせた。

……願いが叶った?

美咲の願いは、僕と恋人関係……になることじゃなかったのか?


「違うよ、お兄ちゃん。私の願いは……『木村健太さんのことを、キッパリと諦めること』だよ」

「僕のことを……諦める?」

「……うん、そうだよ。私は今まで、お兄ちゃんのことが、兄としてではなく、男の人として好きなんだと思ってた。けど、それは違うんだってことに、私は気付いたの」


そっか……僕のことを『男として』見ていたのは、本当のことだったのか。

いや、待てよ?

それが勘違いだったと気付いたって、美咲は言った。

とすると……。


「私は……お兄ちゃんのことを尊敬していたってことを、私は知ったの」


瞬間。

この世界が破滅を迎え、僕は急速に意識を手放した。
















これにて美咲編は終わりです。

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