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―――う、う~ん。


僕は、いつもの通り、カケラが宙を舞う世界で目が覚めた。

……これまで三つの世界に入った。

現在宙に舞っているのは、十個。

……つまり、まだ十人分の願いを叶える必要があるということに繋がる。


「帰ってきたか、健太よ」


―――うん。ただいま、マリアさん。


とりあえず、マリアさんにそう挨拶をする。

すると、


「うむ。よく帰ってきた」


特に他意はないといったような返事が返ってきた。

マリアさんらしい返事だな……。


「どうかしたのか?」


―――いや、何でもないよ。


僕はそうマリアさんに返事を返すと、次のカケラを選ぶことにした。

……最近マリアさんの力が大きくなってきたこともあって、カケラの世界の中で、自分の元の世界での記憶が甦ることも何回かあったりする。

……何というか、そうでもしないと、自分が元々その世界にいるような感じがしてしまって。

演劇で言えば、役になりきるといった感じだろうか。


「……その世界にするのか?」


―――え?……うん。


無意識に僕が選んだカケラには、僕の妹―――美咲の姿が映っていた。

ただ、その表情は、何故か暗い。


―――え?


今までカケラの中に映る人の表情を見たことがなかったので、これには驚いた。

もしかしたら、今までの人達もこのような表情を浮かべていたのだろうか。


「どうした?」


―――いえ、何でもないです。


こんなことをマリアさんに尋ねたところで無駄だろう。

そう考えた僕は、喉まで出かかっていた質問を、無理やり体の奥底に閉じ込めた。


「……それでは、念じよ」


マリアさんに言われて、僕は両手でカケラを握りしめる。

目を閉じて、そして、強く念じる。

……次の世界では、どんなことが起きるのだろうか。

僕は様々な不安を抱えながらも、意識はその世界に旅立っていった。















……うむ、我の力も戻ってきておるな。

だが、力が戻っていくのと同時に、徐々にではあるが、力が失われておる。

我の体が……段々透けておるな。

これも、カケラの世界が順調に消えているからだろうか?

……どうでもよい。

我は元々、この者達の『願い』によって創り出された存在。

そこからこのカケラの世界を創り出したに過ぎぬのだからな。

願いが叶えば、我の存在が消えていくのもまた必然。

……未練などないはずだ。

この者達の願いが叶っておるのだから、後悔することなど何もないはず。

けれど、何故だろうか。

心のどこかで、この状態を望んでおるのは……。

……考えてはならぬな。

とにかく、我も後をついていくことにしよう。

我も助力をせねばならぬからな。
















次回からは、「木村(月宮)美咲」編の始まりです。

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