3-9 初恋は実らない……では二回目の恋は? その9
「じゃあ先生はこれから仕事があるから、二人で話をしていてくれ」
「あ……」
そう告げると、外川先生は職員室を出て行ってしまいました。
残されたのは、私と広瀬先輩の二人だけ。
……何だか、緊張してしまいます。
「どうかした?さっきから僕の顔を見つめたりして」
「え?あ、いえ、何でもないです!」
どうやら私は、ずっと広瀬先輩のことを見つめていたみたいです。
うわぁ……恥ずかしい。
「それで、私に話しがあると聞きましたけど……」
「ああ、その話なんだけどね……」
広瀬先輩は、そこで一旦呼吸を整えます。
それから私に、言いました。
「僕と一緒に……アメリカに行かないか?」
「……え?」
「アメリカに行って、俺と一緒に暮らしてくれないか?」
……ちょっと待ってください。
これってもはや……告白、ですよね?
広瀬先輩が、私に?
「あ、あの、それって……」
「……ああ。そういうことでとってもらってもいい」
「……」
顔が赤くなっていくのを感じました。
体が熱くなってきました……。
な、何で私なんかを?
「僕は……君のことがずっと前から好きだった。不本意ながらアメリカに行くことになって、君に会えない時間がとてつもなくつらくて……けどおかげで僕は自分の気持ちに気づけたんだ。君のことが、好きなんだってことに、気づくことが出来たんだ」
「……」
「だから……僕とアメリカに来てほしい。いいかな?」
「……」
嬉しい提案ではあります。
確かに私も……広瀬先輩のことは好きですから。
けど……。
「御免なさい……」
「え?」
「私は、アメリカに行くことができません……」
だからこそ、私はアメリカに行くことはできません。
だって、私は真実を知っていますから……。
今の広瀬先輩と一緒にアメリカに行っても、お互いに幸せになれないって、知ってますから……。
「……言いたくなければいいけど、一応理由を聞こうかな?」
「……本当は、私も広瀬先輩のことが好きです。ですけど、それ以上に、今の私には気になる男の子が出来てしまいました……ですから私は、広瀬先輩と一緒にアメリカに行くことはできません。それに、私が広瀬先輩に対する『好き』は、男と女の関係ではなく、人として、ですから……」
つまり、私は広瀬先輩のことが『好き』だとしても、『愛している』まではいかないんです。
そんな中途半端な気持ちな私だから、広瀬先輩と一緒にアメリカに行くことは……出来ません。
「……分かった。君の気持ちはわかったよ。僕は諦めて、帰るべき所に帰ろう」
「帰るべき場所……ですか?」
「君も分かっていたのだろう?本来僕は、この世界にいてはならない人間だって」
「!!」
そう広瀬先輩が言った瞬間。
私の目の前から、広瀬先輩が、消えました……。
次回で二ノ宮夏美編は終わりになる予定です。