3-7 初恋は実らない……では二回目の恋は? その7
あれから数日が過ぎた。
その日以降、僕と二ノ宮さんはいつも通りに生活をしていた。
もちろん、他の人も含めてだ。
「でさ、そいつがいきなりよ~」
「……吉行、あの話はもうやめてよ。僕の中では軽くトラウマなんだよ、あの話」
吉行が僕の触れてほしくない過去話を話している時に(内容は聞かないで)、
(ピンポンパンポン)
『一年A組二ノ宮夏美、一年A組二ノ宮夏美、至急職員室まで来てください』
という放送が入った。
「二ノ宮さんが呼び出された?」
「一体何があったんだろう……」
すぐ近くで興味深そうに真剣に聞いていたマコが呟く。
……僕の過去を知りたいからと言って、そう真剣になるのだけはやめてほしい。
「気になるな……木村、見に行くぞ」
「え?大貴?」
何故か大貴が率先して行こうとする。
……そう言えば、大貴は二ノ宮さんのこと好きだったっけ。
「しょうがねぇな。それじゃあ俺も……」
「アンタは行く必要はないわよ」
「な、なんでだよ……中川」
突如美奈さんが、吉行に突っかかってくる。
「そういうことは、夏美のことが好きな奴と、鈍感フラグ王子に任せておけばいいのよ」
「ふ、フラグ王子って……」
「あながち間違っていないから怖いな、うん」
「……吉行、殴るよ?」
「サーセン」
謝る気などさらさらないと言ったような声質で、吉行は言う。
それにしても鈍感フラグ王子って……。
そもそも、フラグって何?
「フラグというのはだな……」
「解説せんでええわ。それよりも木村、早く職員室に行くぞ」
「分かってるよ」
なんとなくだけど、二ノ宮さんが職員室に呼び出された理由が分かるような気がしたから。
僕は大貴の意見に反対意見を述べることもなく、一緒に職員室へむかった。
「……行ったわね」
「なんだよ。お前は気にならないっていうのか?二ノ宮がどうして呼び出されたのか」
懲りずに吉行が職員室に行きたがっている。
私は、そんな吉行に軽く呆れにも似た感情を持ってしまった。
「それにしても、美奈が止めるなんて珍しいね?」
「いつもなら、『私達も行くわよ』って興味持って行く所なのに」
かなえとマコが私にそう言ってくる。
……そうね、いつもの私だったらそう言うかもしれないけど。
「それとこれとは別の話よ。これは私達にも関わってくる話でもあるの。動いていいのは、その世界では限られた人物だけってことよ」
「……は?」
何言ってんだコイツ的な目で、吉行は私を見る。
……正直言って、自分でも何言ってるのか分からない。
けど、私の勘が告げている。
今私達は、職員室に行くべきではない。
私達は、『この世界』の物語に関わるべきでは、ないと。
「……そういうわけで、本人もいなくなったことだし、健太の過去話の続きでも聞こうかしら?」
「……そうだな。健太本人がいなくなったから、リミッターがいないぜ~」
吉行がそう言うと、マコとかなえもすぐに会話に参加した。
……けど、何なのかしら?
『この世界』っていうのが何なのか、私にはよくわからない……。
―――勘付いてきているようだな、世界の仕組みに。