3-2 初恋は実らない……では二回目の恋は? その2
そして何日か経った後に、私はもう一度その人と再会することとなる。
きっかけは、中学校の図書室でのことでした。
当時私は図書委員で、一応中学の時からずっと吹奏楽部も続けていました。
この日は昼休みに図書委員の仕事をする日でした。
普段はほとんど利用させることのないこの場所を管理するのが、私達図書委員の仕事でした。
多くの図書委員の人は、暇でつまらないといいますが、私はこの場所は好きです。
静かで落ち着けるし、何より……読書に打ち込める場所ですから。
図書委員の人も本は読んでいていいとのことでしたので、私はいつも本を持って、図書室に行くのでした。
この日も、そうして私は昼休みを過ごす……はずでした。
「あの、すみません……」
「え?あ、はい!」
読書に夢中になっていて、目の前に現れてきた人の存在にまったく気づいていませんでした……。
けれど、昼休みに本を借りに来る人は、珍しいです……。
「この本を借りたいんですけど……」
そう言って、その人が渡してきたのは……。
『基礎英会話』の本でした。
「英会話……」
「……ん?君、ひょっとして……」
「はい?」
その人にそう言葉をかけられて、私は初めてその人の顔を見ました。
そういえば、どこかで聞いたことのある声だなぁ……と考えていたら、
「やっぱりだ!君、あの日廊下で会った人だよね?」
その人は、私にそう問いかけてきました。
……思い出しました。
この人は、私がプリントを抱えて歩いている時に、ぶつかってしまった人でした!
「は、はい!……あっ」
動揺していたのか。
私の声は、いつも以上に高くなってしまった。
私は恥ずかしさのあまりに、つい顔を赤くしてしまう。
「……どうしたの?顔、赤いよ?」
「な、なんでも……ないです」
私の最後の方の言葉が小さくなっていく。
恥ずかしさを紛らわす為に、私は本の手続きを済ませてしまう。
……ここで、私は一つの疑問が思い描かれた。
「『基礎英会話』の本を借りられるみたいですけど……英文科に行くのですか?」
「う~ん……近いけど、厳密に言えば違うかな」
私が辿り着いたとある質問。
それは、どうしてこの本を借りたのかという疑問でした。
普通なら、この本は借りないことでしょう。
しかし、この人はその本を借りた……何か理由があってなのか。
それとも、単なる暇潰し?
「……では、どういった理由で……あ、話したくなければ別に……」
「……君になら、別に話してしまってもいいかな」
「え?」
その人が何を言っていたのかは分かりませんが、どうやら私に話してくれるそうです。
「……僕はね、将来フリーのジャーナリストになろうと思うんだ。しかも、戦場ジャーナリスト」
「……へぇ~いい夢じゃないですか」
戦場ジャーナリストか……。
確かにいい職業だとは思いますけど……。
「けど……危ない、ですよね?」
「……驚いた。そんな反応をしてくれたのも、心配してくれたのも、君が初めてだ」
「そうなんですか?」
こんなに危なくて、いい職業だと思いますけど……それでも、同意してくれる人がいなければ、心配してくれる人もいないって言うのですか?
「ああ……みんな『無理だ』の一点張りさ。内心僕のことをバカにしてくる奴もいる」
「そんな……バカにするなんて酷いです!」
「いいんだ……君が分かってさえ居てくれれば」
私にそう言いながら、私の頭を撫でてきました。
……頭を撫でられた?
「……?」
「あ、いや、つい癖で……」
……今、私はこの人に頭を……!!
は、恥ずかしいです……。
「どうしたの?また顔が……」
「だ、だ、大丈夫です!!」
つい私はそんな反応を返してしまった。
「……まぁ、次に会った時に不便だから、名前を教えておくね。僕の名前は、広瀬光。君の名前は?」
「……二ノ宮夏美です」
「それじゃあ……また会おうね、二ノ宮さん」
その言葉を残し、広瀬さんは図書室を出ていきました。
……この時、私の頭の中は、広瀬さんのことでいっぱいでした。
ですが、この先私が広瀬さんに会うことは、ありませんでした……。