3―1 初恋は実らない……では二回目の恋は? その1
私は、あの日から健太君に惚れていました。
今でも、私の想いは変わっていないと思います。
けれど……この想いを健太君に伝えられずにいます。
いつか小説で読んだことのある……『初恋は実らない』という言葉。
それは……恐らく本当の話でした。
けれど、そんな話は私には関係ありません。
私にとって、健太君は……初恋の相手というわけではないのですから。
第三のカケラ 初恋は実らない……では二回目の恋は?
私は中学生の時、とあるクラスメートのことが好きでした(正確に言えば、好きだった『かもしれない』の部類に入るかもしれません)。
そのきっかけは、突然のことでした。
「……よいしょっと」
私が先生に頼まれて、その日の授業で使う分のプリントを持って行っていた時のことでした。
そのプリントはクラス全員分あるし、しかもクラスの人数の三倍分―――つまり一人三枚プリントを貰うことになるのですが―――があっただけに、重さも結構あったし、高さも結構ありました。
幸か不幸か、そのプリントは一人分でホチキスで止められてあったので、もし落としてしまったとしても、ごちゃごちゃに混ざってしまうという危険性だけは回避することが出来そうです。
「前が……見えない……」
前を見るのも一苦労。
このままでは、いつ何処で転んでしまってもおかしくはない状況にありました。
「人が来たらどうしよう……」
転ぶ以前に私が恐れていたこと。
それは人にぶつかってしまうことでした。
人にぶつかってしまったら、その相手の人にも迷惑がかかりますし……。
それだけは、何とか避けたいです……。
と、心で呟いたその時でした。
「……うわっ!」
「キャッ!」
思った矢先に、私は誰かとぶつかってしまいました。
私が抱えていたプリントは、その時に落ちてしまい、少し他のプリントと混ざってしまったようです。
けれど、今はその時じゃ……ありません。
「ご、ごめんなさい!私が前を見ていなかったばっかりに……」
「いいって。気にしてくれなくても大丈夫だから」
「……何処か怪我とかありませんか?」
「うん、大丈夫だよ」
その人は、男の人でした。
学年は私より一つ上だと思います。
背は私よりも高くて、髪の毛は黒。
そして……体が少し頑丈そうな人でした。
何より優しそうな感じでした。
「……あ、拾ってあげるよ」
「あ、ありがとうございます……」
その人は、私が落としたプリントを拾ってくれました。
やがてすべてのプリントを拾い終えた後、その人は行ってしまいました。
……これが、あの人と私の最初の出会いでした。




