0―3 Question
目が覚めると、僕はまたあの場所に立っていた。
……ああ、僕はまたここに帰って来たのか。
「ご苦労だった。そなたのおかげで、二つ目のカケラも、無事終わりを迎えることが出来た」
背後から声がしたので、僕は後ろを振り向く。
そこには、相変わらず美人の女神がいた。
―――ところで、疑問が三つほどあるんだけど、いいかな?
「疑問とな……よいぞ。何でも答えてしんぜよう」
許可もとったことだし、この際聞きたかったことを聞いてしまうか。
―――それじゃあ一つ目。あの世界で、静香さんは病気で死んでしまったけど……あれも、静香さんの願いだったの?
「ふむ……やはりその質問が来たか。それは、違うな」
違う?
なら、どうしてあの世界の静香さんは、病気で死んでしまったりなんかしたのだろうか?
「願いによって構成されている『カケラの世界』だが、その世界で願いを叶える為に、ある程度の代償を孕んでしまう可能性があるらしい」
―――……代償?
「うむ。青水静香の世界におけるそれは……己の病気の進行だったということだ」
病気の進行、か……。
元の世界での静香さんは、病気は治りつつあるものな……。
たしかこの前に、後一週間で治療が終わるとかなんとか。
―――それで二つ目は、どうしてあの世界では静香さんが死んでしまったのにも関わらず、僕の前に現れたの?
「それは……我が青水静香に力を貸したのだ」
……力を貸した?
つまり、静香さんとこの人は、直に対面したということになるのか?
「願いを叶えきれていない様子だったのでな……真実と共に、我が力を貸したのだ」
―――真実って、この世界のこと?
「その通りだ」
なるほど。
だからあの時、静香さんはあんなことを言ったし、あんな状態で僕に会ったのか。
―――それじゃあ、三つ目の質問を。
「うむ。これで最後だな」
僕がこの世界に来て、結構時間が経つ(と思う)けど、その時から気になっていたことがあった。
それは……。
―――貴女の名前を、教えてよ。
「……我の名前か?」
―――うん。貴女は僕の名前を知ってるのに、僕が貴女の名前を知らないなんて、何だか不公平じゃないかな?
「……よかろう。教えるつもりはなかったのだが、特別に教えてやろう」
教える気はなかったんだね……。
僕は若干の脱力感を感じたが、
「我の名前は、『マリア・ワール』」
「マリア・ワール……」
キリストの母の名前か……。
「これでよいか?……それでは次の世界に行くがいい」
―――分かった。
僕は、慎重にカケラを選んでいく。
そのどれもが、強い願いが込められていて、重みがある。
―――よし、これにしよう。
選んだのは、二ノ宮さんの世界のカケラ。
「……その世界にするのか」
―――うん。
「なら、強く念じろ」
マリアさんに言われて、僕は強く念じる。
程なくして、僕はその世界に吸い込まれる。
しかし、直前に見えたマリアさんの体が、若干透けているような気がしたけど……気のせいかな。




