1-1 ~if~あの時告白が出来ていたとしたら その1
「ねぇ、健太」
「何?急に改まったりして」
「……私、このまま健太と離れ離れになるの、嫌」
「え?」
突然の一言に、健太は驚きを隠せずにいた。
まさかそんなことをこの場で言われるとは思っていなかったからだ。
「……このままオリエンテーション旅行が終わって、また離れるのだけは嫌。本当は健太と同じ学校に通いたかったのに、それが叶わなかったし……」
「あ、愛?」
「……私は、健太のことが……健太のことが好きなの!!」
私立相馬学園 ~multh end tales~
第一のカケラ ~if~あの時告白が出来ていたとしたら
「ん……」
目が覚めた。
起きてみると、いつもと同じ天井が目に映ってきた。
……なんだろう、何かを忘れているような気がする。
僕の中で、何だか記憶が抜け落ちているような感覚を感じる。
……本当に、不思議な感覚だ。
「お兄ちゃんおはよう!」
……そして美咲は、相変わらずの笑顔で僕のことを見つめてくる。
僕を抱き締めながら。
「美咲、いつも言ってるじゃないか。自分の布団で寝なさいって」
「だって……お兄ちゃん暖かいんだもん♪」
髪留めから出てる髪の毛をピョコピョコと動かして、美咲はそんなことを言ってくる。
……今はそんな季節だったかなと、僕は思わずカレンダーを確認する。
九月十四日。
およそ気温が寒い時期とも思えなかった。
「……今はまだ秋だよ。とてもじゃないけど、二人で寝なきゃならないほど寒くはないよ。寧ろ美咲、汗かいてるじゃないか」
見ると、美咲の額には、微かに汗らしきものが見えていた。
……さすがにこれじゃあ言い逃れは出来ないだろう。
「……本当はお兄ちゃんと一緒の布団で寝て、たくさん汗をかこうと……」
「言い訳成立!?」
まさかそう返されるとは思ってなかった!
「……とにかく、学校へ行く支度と、朝食の支度をするから、一旦離れてね」
「……分かった」
とりあえず美咲は素直に離れてくれたので、僕はようやっと起き上がることが出来た。
僕が着替えをすることを察してか、美咲は部屋から出てくれた。
僕は寝間着から制服に着替え、今日の用意をしっかりと確認をした後、パンを焼き、コップの中に牛乳を注ぐ。
目玉焼きを焼いて、トースターから出てきたパンの上に乗せる。
ヨーグルトを添えて、本日の朝食の出来上がり。
「お待たせ♪」
「ちょうどよかったね、美咲」
タイミングよく美咲の準備が整ったので、二人一緒に朝食を食べることとなった。
「「いただきます!!」」
朝食を食べながら、僕と美咲は話をしていた。
学校のこととか、今日の予定とかを。
そして、時間が経過して、
「「ごちそうさま!!」」
朝食を食べおえ、後片付けをした後に、
「それじゃあお兄ちゃん、行ってきます!」
「いってらっしゃい。美咲」
美咲は中学校へ。
僕は自分の高校へ向かう。
これが僕達の日常。
僕の毎日は、この朝から始まるのだ。