表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/106

2―7 Her's last love その7

「し、静香さん!?」


僕はともかく、愛や医者までも、静香さんが目覚めたことに驚きを見せていた。

それだけ、静香さんは深く眠っていた……もとい、命の危機に瀕していたのだろう。


「そこに……健太君が、いるんですね?」

「うん、僕はここにいるよ。分かるよね?」


静香さんの手を握ってみて、そこで初めて気付いた。

……静香さんの手が、冷たい。


「静香さん……手が、冷たい……」

「もうすぐ私は、死ぬんでしょうね……きっと私の命は、今日を以て神様にお返ししなければならないのでしょう」

「……そんなこと言わないでよ。静香さんはまだ生きていられるって。現に僕とこうして話しているし、手を握っているじゃないか」


弱気なことを言っている静香さんに、僕は励ましの言葉を言う。


「健太の言う通りだよ!まだ静香は生きてるんだもの。死ぬなんて言っちゃ駄目だよ!」


僕の後についてくるように、愛も励ましの言葉を述べた。

……けれど、それでも静香さんは、寂しい笑顔を保ったままだ。


「お話があるなんて言ったのに……こんなことになってしまって……すみません」

「いいって。今こうして、静香さんと話が出来ているんだから」


こんな形にはなっているけど。

今こうして、僕と静香さんは話をしている。

つまりは、約束は守れているということだ。


「……静香さん。それで、僕に話っていうのは、何?」


僕は静香さんにそう尋ねる。

先ほどの言葉を言ってから、ほとんど間を開けずに、だ。

間の時間を開けてしまうと、静香さんが遠くに行ってしまうのではないか、という不安があったからだ。


「話というのはですね……私の気持ちの、ことです」


途切れ途切れに、静香さんはそう言った。

……静香さんの気持ちのこと、か。

一体、どんな話なのだろうか?


「……聞かせてくれないかな。静香さんの想いを」

「……はい」


ベッドの上で眠っている静香さんは、首を縦に頷かせて僕の要求に答える。

そして、一回深呼吸してから、話始めた。


「初めて健太君に出会った時……あなたは記憶喪失の状態でしたよね?」

「……そんな時もあったね」


突然僕の話題が出されて少し驚いたが、僕は静香さんの話の続きを聞くことにした。

医者と愛は……空気を読んだのか、いつの間にか部屋にいなかった。

二人きりの病室の中で、静香さんの話は続く。


「その時私は……可哀想な人だと思いました。大切な記憶をなくし、何も思い出せない健太君のことを、可哀想だと思いました」

「……」

「次に、記憶を取り戻したと報告してきた健太君を見て……ホッとしました。あまり会うことがなかったのに、そう感じたのです」


記憶を取り戻した日……かなえさんが不良に捕まった日のことか。


「そして……その日から何日間か、会わなかった時がありましたよね?」

「うん、そうだね」

「その時……私は気付きました」

「……何を?」


僕はその先の言葉を尋ねる。

静香さんは、一旦ここで間を置いて、そして言った。















「私は……健太君のことが好きなんだって」
















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ