2―6 Her's last love その6
(バン!)
扉がうるさく音を奏でた。
迷惑になるのでは、とか、そんなのは関係ない。
僕は……確かめたかったのだ。
静香さんの、無事な姿を。
僕の嫌な予感が……どうか現実になりませんように。
「……健太」
中に入ると、すぐに愛が僕に話しかけてきた。
その顔にも……やはり僕同様に急いで来たのか、汗らしきものが出ていた。
「……状況は?」
僕は、そんな愛に尋ねる。
すると、その質問には、
「……病状が一転して、命の危機に晒されています。このままの状態が続けば、静香さんは……」
白衣を着た男の人……すなわち医者の人が、僕の質問に答えてくれた。
……命の危機に晒されている?
「……まさか」
「ええ……予想以上に病気が進行していたみたいで、今が、生きるか死ぬかの瀬戸際というところです……」
「……そんな」
静香さんは、僕に話があるって言ってくれた。
僕も、静香さんに話があるからここに来た。
……なのに、どうして運命というのは残酷なことなんだ?
どうして神様は、僕と静香さんが会話をするという簡単な願いすらも通さない?
「……こんなの、ないよ。そんなのってありかよ!」
(ドン!)
心に滲み出てきた、怒りにも似た感情を晴らす為に、僕は壁を殴り付けた。
「健太……」
その横では、愛が、どうすればよいのかと、戸惑いの表情を浮かべながらこっちを見て、呟いた。
「このままじゃ……静香さんの話も聞けないし、僕の想いを伝えることも……!!」
瞬間。
僕の頭に過ってきた、ある話。
それは、管野さんが僕に話してくれたことだ。
……想いを伝える前に、管野さんの大切な人は、死んでしまった。
このままでは、僕も管野さんと同じ末路を辿ってしまうではないか―――!!
「……もっと早く気付いていれば良かった。僕のこの気持ちに、もっと早く気付いていれば良かった―――!!」
「……気持ちに、気付いたんだね」
その時。
愛が僕に話しかけてきた。
「……うん。僕は、静香さんのことが……好きなんだって」
「……そっか。なら、静香を信じないと」
「信じる?」
信じるとは、どういうことを差しているんだろうか?
「……今の健太は、静香がもうすぐ死んでしまう。極端に言えば、100%静香が死ぬって考えてるよ」
「……そんなことはない!僕は静香さんが死ぬだなんて、考えてはない!」
「なら、どうして静香が死んでしまったことを前提にして話を進めてるの?」
「そんなこと……!!」
言われて、僕は気付いた。
……そうだ。
想いを伝えることが出来なかったとか考えているその時点で、僕の中で静香さんを殺してしまっているではないか―――!
「……ありがとう。おかげで気付くことが出来たよ」
そうだ。
僕が信じないで、どうするんだ。
その時だった。
「けん……たくん?」
静香さんが目を覚ました。




