2-5 Her's last love その5
僕は今、病院に向かって歩いている。
家にも帰らず、制服のまま病院に向かっているのには、理由がある。
それは。
「……早く静香さんに会いたい」
病院に近づく度に大きくなる、僕の想い。
それは、静香さんに会いたいという、僕の心の中からの欲求。
それは、長い時間話していたい、という僕の心の中からの焦り。
「……僕はこんなにも、静香さんに夢中になっていたんだな」
静香さんが、僕のことをどう思ってくれているのかは知らない。
でも、僕は静香さんのことが……『好き』だ。
単なる友達の一人、としてではなく……女性として、『好き』なのだ。
『好き』……すなわち『愛している』。
「何だか、自分で言ってて、よくわからなくなってきた」
頭の中での言葉に、僕自身も何だかわけがわからなくなってきた。
自分は今、何を口走っているのだろうか?
……さっぱりだ。
「とにかく、今は病院に行かなきゃ。早く静香さんに会って、僕の想いを伝えるんだ」
今日静香さんに会いにいくのは、静香さんからの話を聞くためというのがある。
だが、それだけで終わらすつもりはない。
静香さんに……僕の想いを伝えるんだ。
伝えないと、僕の心ははっきりとしない……心が晴れない。
……心臓がバクンバクンと音を立てていることが分かる。
「……緊張してきた」
これから告白するということもあって、僕の心臓は限界まで音を鳴らしている。
神経を集中させていなければ、心臓が破裂してしまうのではないかと思われるほど、強くだ。
……本人を前にした時は、この音がさらに大きくなっていることだろうし。
「僕は静香さんにきちんと想いを伝えることが出来るのかな?」
今更になって、僕に不安がのしかかってくる。
でも、そんな時に思い出されたのが……。
『その想いは……早めに伝えた方がいいと思うよ。その人が、別の想い人を見つけてしまう前に……そうなってしまったら、苦しいから。もう、その恋は、叶わなくなるから……』
悲しそうな顔で、誰かがそんなことを僕に言った気がするのだ。
それにしても……この言葉をくれたのは誰なのだろうか?
今度、お礼を言っておかなくちゃね。
とにかく、こんな想いを抱いた時には……早めにその想いを伝えるべきだ。
僕は、そのことを、この言葉より学んだんだ。
だから……今更不安なんて抱えているわけにはいかない。
この言葉を伝えてくれた人にも、大変申し訳ないからだ。
決めた、不安は消した。
後は……本人にこの想いを伝えるだけだ。
(ピリリリリリッ)
「ん?電話?」
その時、僕のポケットの中から、携帯の着信音が鳴るのと同時に、バイブ音が発せられるのを感じた。
誰からだろう?
ポケットから携帯を取り出して、中を見る。
画面には、『早乙女愛』という名前が表示されていた。
……早乙女愛?
愛からの電話?
(ピッ)
僕は少し考える時間を設けたが、電話に出た。
「もしもし?」
『あ、健太!今何処にいる?』
「今?病院に向かう道の途中にいるけど……」
どうしたと言うのだろうか?
愛の声は、焦っているようにも聞こえた。
……嫌な予感がする。
「愛は?愛はどこにいるの?」
『病院だよ!!今……凄く大変な事態が起こってるの!!』
「大変なこと?大変なことって何!?」
自然と僕の声まで荒くなっている。
お願いだ……この予感が、どうか当たりませんように。……!!
『静香が……静香の容態が急変したの!!』
……嫌な予感は、当たってしまった。