2-4 Her's last love その4
その後、何日か経過して。
約束された日になった。
だけど、この日は授業もあるということで、学校から帰ってきてからの訪問となる。
「今日も行くのか?」
吉行が僕にそんなことを尋ねてくる。
「うん。静香さんとの約束だからね」
「う~む、俺も一度、静香さんという人を見てみたいものだな」
「健太が記憶喪失の時に出会った人、ね……」
と、吉行と話していると、後ろから美奈さんが言葉を発してきた。
「うわっ!美奈さん、いきなり後ろから現れないでよ!」
「いいじゃないの。別に減るものじゃないし」
「何の話してるんだよ、お前は……」
美奈さんの発言に、吉行が呆れながらもそう言葉を返す。
……正直言って、僕も何言ってるのか分からなかった。
「ボクも見てみたいな。青水静香さんって人を」
「マコまで?」
「うん!……健太君がずっと会ってる人だもん。会ってみなきゃ」
「何か言った?」
「ううん、何でもないよ!」
最後の方が聞こえなかったので、僕はマコに聞いてみた。
しかしマコは、両手を振って、首を横に振って、そう言葉を返すだけだった。
……なんて言ってたんだろう、一体。
「鈍感も、ここまで来ると最早救いがないな」
「それは言ってやるな、大貴。多分本人も自覚してんだろうから」
「……鈍感って部分は、昨日美咲に指摘されたばっかりだよ」
大貴まで僕のことを鈍感と言ってきた。
……やっぱり僕って、鈍感な男なのだろうか。
……って、あれ?
僕は、何に対して鈍感なんだろうか?
「駄目だこりゃ。鈍感だってことには気づいても、何に対して鈍感なのか分かってない様子だぞ」
「……前言撤回だな」
「言いたい放題言わないでよ」
何だかこのままだと、どんどん僕の話が深まっていくばかりだ。
そう思った僕は、この話題を慌てて切った。
「それで、次はいつ会いに行くの?」
かなえさんが僕に、そう尋ねてくる。
「今日の放課後だよ」
「今日の放課後!?」
「ああ。だから俺が、『今日も行くのか?』って聞いたんだぜ?」
驚く様子のかなえさんに、吉行がそう説明を加える。
僕が病院に通っていることを知らなかったかなえさんは、かなり驚いていた。
……そういえば、病院に通って静香さんと話をしているなんてこと、吉行と大貴以外には言ってなかった気がする。
帰る時も、
「今日は早めに帰るから」
と言って、理由も告げずに帰っていたことも多々あったっけ?
「それじゃあ、そろそろ行くね」
「なぁ、今日は一緒に行くってのは出来ないのか?」
吉行がそう尋ねてきた。
いつもなら、断る理由もないんだけど……。
「ごめん。今日は二人きりでっていうことなんだ。何でも、大切な話があるとかで」
「……そっか」
僕がそう言うと、吉行は何かを悟ったような表情をして、こっちを見てくる。
……その笑顔はなにさ。
「そうか……いよいよ健太も」
「……まさか、あれなの?」
マコが顔を青くして何かを言う。
……あれ、とは?
「まぁ、行ってからのお楽しみってことね」
「ちょっと待って!……ボクは納得してないよ!!」
「まぁまぁ。早く行った行った!……いい知らせ、期待してるぜ」
吉行に押されて、僕は教室の外に出される。
……って、
「今はまだ朝だよ!学校に来たばっかだから!」
「おっと!そうだったな」
危うくそのまま帰ってしまう所だったよ……危ない危ない。
……でも、早く病院に行って、静香さんと話したいな。
静香さんからの大切な話の内容も聞きたいし……僕の想いも伝えたいし。