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2-1 Her's last love その1

私は、初めてあの人と出会った時から、何かを感じていた。

なんだろう……他の人と話をしている時には感じない、一種の安心感みたいなもの。

この場所にあの人がいて、私はその人と話が出来る。

……こんなに、人と話が出来ることが楽しいと思えた時はあっただろうか。

ああ……出来れば時が止まって欲しい。

そんなことさえ考えていた。

本当に、どうしてしまったのだろうか……私の心臓は。

さっきから、喧しい程の大きさで、心臓が鳴り響いているのだ。

あの人のことを考える度に。

あの人の姿を、思い浮かべる度に……。















第二のカケラ Her's last love















僕の記憶がなくなってしまった時に屋上で出会った少女……青水静香さんと出会った病院に、僕は来ていた。

理由は、静香さんとの約束がある為だ。

約束と言っても、特に何かをするわけでもない。

ただ、近況報告をするくらいだ。

僕が退院したその日、静香さんは僕に、


「もしよろしかったら……これからも、会ってお話しませんか?」


と提案してきた。

もちろん僕の返事はOK。

断る理由があるわけではないし、僕自身も静香さんとはお話がしたかったからだ。


「あら?君は木村君かしら?」

「あ、こんにちは」


ここの病院には、週三回、水・金・日曜日の割合で来ている為、ここの人達には、名前を覚えられていた。

なんというか……少し照れるかな。


「今日も、静香ちゃんかしら?」

「はい。今日も話す為のネタを持ってきて、一緒に時間を過ごそうと思っています」

「あらあら……お熱いわね」

「そんなんじゃありませんよ。ただ……」

「ただ……何かしら?」


僕が何かを言いかけた為、看護師のお姉さんは、そこから話を追及しようとする。

まぁ……隠す必要もないし、言うだけ言ってもいっか。


「……僕は静香さんのこと、その、何て言いますか……」

「静香ちゃんに恋してる……かしら?」

「!!」


まさかストレートに言われるとは思っていなかったので、僕は驚く以外に反応が取れなかった。

同時に、自分の顔が赤くなっていくのも感じた。


「図星みたいね……いやぁ~若いって良いわね!」

「管野さんだって十分若いじゃないですか……」

「あら。私はこう見えて34よ?」

「え!?」


意外だ。

管野さんはまだ20代後半だと思ってたのに……。


「まだまだ私も行けるみたいね。思い切って私も告白すれば良かったかしら……」

「好きな人、いるんですか?」


管野さんの呟きを聞いて、僕はそう尋ねる。

すると管野さんは、


「ええ……居た(・・)わね」

「……居た?」


……過去形?

過去形になってるってことは、何かあったのだろうか?


「……ええ。とても優しい人がいてね。私はその人に一目惚れしてたのよ。けど……」


管野さんは、そこで一旦言葉を止める。

そして。


「……交通事故で、ある日突然死んだの」

「!!」


こ、交通事故……。

そんな別れ方、あんまりだ……。


「私ね。その人のことがとても好きだったのに、結局自分の気持ちも、相手が私のことをどう思ってくれてたのかも、知らずに別れることになっちゃったの。だからね、木村君」

「はい……なんでしょうか?」


真剣な表情で僕のことを見てくる管野さん。

これからする話が、真剣な話だと予想出来る……否、それ以外に考えることが出来ないような表情だった。


「好きな人が出来た時にはね、その人に早めに想いを伝えた方がいいわよ。いなくなってからじゃ遅い。ましてやその本人がいなくなってから自分の気持ちに気付くんじゃ、もっと遅いわ」

「……」

「だからね……早く木村君も自分の気持ちに気付いた方がいいわよ。失ってから得られるものなんて、何もないんだから……」


その言葉を言った時の管野さんは、ひどく寂しそうで。

しかしその言葉は、僕の胸に確実に響いていた。















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