0-13 Epiloge
―――ん。
気付けば僕は、ここに戻って来ていた。
かつては、沢山のカケラが散らばっていた世界。
でも、今となってはもはやそんなこと微塵も感じさせないような……寂しい世界。
最後の世界のカケラも砕けてしまい、もはやカケラと呼べるものは消えてなくなっていた。
……いや、一つだけある。
沢山のカケラが合わさって出来た……何も写し出されていなかった大きなカケラが一つ、そこにはあった。
「……よくぞ頑張ったな、木村健太」
―――マリア、さん?
声はする。
だけど、姿は何処にも見えない。
恐らく姿を消しているのだろう……なるべく力を使わない為にも。
「長い間ご苦労じゃった。そなたのおかげで、ここに散らばった十二のカケラに秘められた願いを、すべて叶えることが出来た……本当に感謝しとるぞ」
―――お礼なんていいんですよ。僕だって十分に楽しめましたし。
少々不謹慎だとは思うけれど、実際この世界旅行は、楽しかったのだ。
時折悲しい世界もあったけれど、基本的には楽しいことばかりではあったわけだし、とても楽しかった。
けど……それももう終わりだ。
明日からは普通の一日が。
みんなとの日常生活が待ち受けている。
どんな一日になるかは……まだ僕も分かってはいない。
「……お主のおかげで、我も眠りにつくことが出来るらしい。どうやら我の仕事はここで終わりのようだ」
―――え?
それじゃあ……マリアさんはここで完全に消えてしまうということなのか!?
そんなのは駄目だ、絶対駄目だだ!
マリアさん一人だけがこの世界と共に消えてしまうなんて……こんなの絶対間違っている!
「我はこの世界と同一的な存在なのだ……この世界が消えるのなら、我が消えるのもおかしくはないであろう?」
―――そ、それはそうだけど……。
戸惑ってしまう。
確かに、マリアさんの言っていることは決して間違ってはいない。
何故なら、マリアさん自身がこの世界を作り上げたのだから。
マリアさんとこの世界が同一的存在であるのも否定出来ない。
つまり理論上は、この世界の破滅とマリアさんの消滅は同じことということになる。
分かってはいる、分かってはいるんだけど……認めることが出来ないのだ。
「……さぁ、早くこのカケラを通じて元の世界に帰るがよい」
―――マリアさんは、一緒に来ることは出来ないの?
思わず僕は、マリアさんに尋ねていた。
マリアさんは、さぞかし困ったような声色で、
「……それは無理だ。我がそなた達の世界に現れてしまえば、歴史が改変されてしまうことになる。それはあってはならぬことなのだ」
―――そっか。それじゃあマリアさんとは……ここでお別れになっちゃうのか。
「うむ……そういうことになるな」
悔しいけど、それが世界の理だというのなら、僕にはどうすることも出来ない。
ただ、黙って帰ることしか、僕には出来ない。
……なんだか気分が晴れない。
「大丈夫だ。この世界での記憶も、元の世界に帰れば消えるから」
―――それじゃあ……僕はもう、マリアさんのことを思い出せなくなるということですか?
マリアさんは答えない。
ただ、その代わりに、
「……時期にこの世界は崩壊する。我と共にここで消滅するか、元の世界に帰るかを選ぶがよい」
……答えは、既に出ている。
言うまでもなく、僕は元の世界に帰らなければならない。
そうしないと……僕の帰りを待つ人が、悲しむから。
みんなで元の世界に帰らなければならないから。
―――それじゃあマリアさん、元気で、ね。
「……うむ。今度のそなたの活躍、遠い場所から見させてもらうぞ」
大きな世界のカケラに手を触れると、僕の身体がそれに吸い込まれていくのが感じられる。
そのまま……僕は……。
「う……ん……」
目が覚める。
するとそこは……いつも通りの僕の部屋の天井。
そして僕は……布団の中でいつものように眠っていた。
「あれ……今までのって、全部夢?」
何だかとてつもなく長い夢を見ていた気がする。
忘れちゃいけないほどの……とても大切な夢を。
「僕は今まで、何を……」
何がともあれ、今日は春休みの真っ最中。
……そう言えば、かなえさんと一緒に旅行に行く約束をしてたんだっけ。
「さて、荷物もまとまってることだし……」
朝ごはんを作ろう。
そして……美咲と一緒に食べ、いつもの朝を満喫しよう。
そんな、いつもの毎日が、始まろうとしていた。
私立相馬学園 ~multi end tales~
END
祝!私立相馬学園シリーズ完結!!
だからと言って……何か特別なことをするわけでもありませんが。
健太「あれ?いつものやつはやらないの?」
いつものやつって何ですか?
吉行「座談会だよ。いつもアンタの作品が終わった後にやってるだろ?」
ああ、あれね。
だから今回は、ここが座談会というわけで。
かなえ「な、何だかわかりにくいね……」
美奈「それはそうと、今回私の出番が少なかったわね」
大貴「それは言えるな。俺の出番も少なかったが、そこはどう説明するつもりだ?」
……さて、それでは今回はこれにてお別れです!
大貴「早いわ!まだ始まってから数行しか書いてないじゃないか!!」
健太「テンション高いね、大貴……」
まぁ、いままで出番がなかったのですから、当然と言えば当然でしょう。
ですが、今回はあまり尺をとれないので、本当にこのくらいにしたいと思います。
健太「あれ?本当にこんな短くていいんですか?私立相馬学園シリーズの最後なんですよね?」
まぁ、最近は『Magiciasn Circle』終わらすのに必死ですから……。
それでは、最後にここまで読んでくださった読者の方々に一言。
今作品、『私立相馬学園 ~multi end tales~』を含め、私立相馬学園シリーズを読んでくださって、本当にありがとうございました。
これからも、どうか私、『ransu521』をよろしくお願い致します。
それでは、またどこかで会う機会を楽しみに待っています……。
今まで本当に、ありがとうございました!!