12-5 After days その5
「「おお……」」
露天風呂にやって来た僕達は、とりあえず外から様子を伺ってみた。
すると、そこには大きめな露天風呂らしき建物があった。
残念ながら、ここからではどんな風景が見えるのかなどは判断つかない。
それだけは、少し残念だ。
「……ここに脱衣場があって、この先に露天風呂があるんだよね」
「着替える場所は別々だし、一応男女で別々の風呂なんだろうね」
脱衣場は男子と女子で別々に用意されていた。
ということは、風呂場は男女別に用意されているということだ。
なんだか安心したような……少し残念のような。
「……どうしたの?健太君」
「え?いや、なんでもないよ」
いつの間にか僕の顔を覗きこんでいるかなえさん。
僕は、いきなりかなえさんの顔が目の前にやって来たことに驚きつつも、なんとか冷静に言葉を返すことが出来た。
「それじゃあ……入っちゃおうか?」
「そうだね。汗もかいたし、早くさっぱりしたいものね」
僕達は脱衣場に行き、それぞれの風呂場に向かう。
脱衣場の中も、それなりに広かった。
「20人くらいなら入れそうだな……」
いつしかオリエンテーション旅行で行った時の旅行よりはかなり狭いけれど、それでも十分の広さを誇る脱衣場。
これなら風呂場の方も期待出来るかもしれない。
「どんな風景が見れるんだろうなぁ……」
ワクワクしながら、僕は服を脱いで、タオルを腰に巻いて、いざ浴槽へと向かう。
すると、そこから見えた光景は……。
「うわぁ……綺麗だぁ……」
桜の花が咲いているのが見え、遠くには富士山みたいな山が見える。
なんというか……とても贅沢な風景だ。
そして、肝心の浴槽の方はと言えば、普通に広かった。
人が15~20人は入ると思われる程の広さを持っていた。
……なんて贅沢な一時なんだろう。
「こんなお風呂に僕一人で入れるなんて……何となく夢みたいだ」
これでかなえさんが一緒にいれば……って、僕は変態か!?
大丈夫かな、僕の思考能力は……この頃かなえさんと付き合い始めてからは、若干そっちの思考回路が出来あがってしまったのだろうか。
落ち着こう……僕はそこまで堕ちていないはずだ。
多分……いや、絶対に。
「……それにしても、なんていい風景なんだろう」
ひょっとしたら女子風呂の方から見ると別の風景が見えるのかもしれない。
時間で入れ替わり制とかになってたら、反対側の風景とかも見てみたいかもしれないなぁ。
「こっちが桜で、隣は梅の花が見える……とかかな?」
ともかく、今の季節にぴったりな花だと思う。
何と言うか……心が癒されると言うべきか。
(ガラッ)
「……ん?」
その時。
扉が開くような音が響く。
と言うことは……他に誰かが入ってきたということかな?
「ここが露天風呂なんだ……結構大きいかも」
……ん?
この声、女性の声だよね。
しかも、僕の知り合いの声だ。
というか、さっきまで外に一緒にいたじゃないか。
「……って、まさかここって女子風呂!?」
「え!?その声はもしかして……健太君!?」
……何と言うことだ。
僕の目の前に現れてきたのは、タオルを巻いたかなえさんがいた。