12-2 After days その2
その後僕達は、色んな場所を巡り歩いた。
修学旅行で行くような場所を、次々と巡って行く。
そして僕達が清水寺にやって来た時、
「ねぇ健太君、ここから見る景色ってかなりいいよね?」
「うん……空気もおいしいし、文句のつけようがないくらいだ」
清水の舞台から景色を眺めながら、かなえさんがそんなことを聞いてくる。
僕は正直な気持ちをかなえさんに伝えたつもりだ。
かなえさんは、笑顔で僕に言ってくる。
「こんな景色……今じゃほとんど見れないような風景だよね……」
「……そうだね。これほど木があるような場所もないだろうしね……秋に来れば、もっと違った景色が見られるんだろうなぁ」
今は季節で言ったら、春に入るちょっと前くらいだ。
だから、多くの木は葉っぱをつけているようには見えないし、少なくとも紅葉はしていないだろう。
ただ、一部の木は桜の花を綺麗に咲かせているため、春の訪れを自然と感じることは出来た。
「……春だね、かなえさん」
「そうだね……健太君」
「思えば僕達、一年前の春に出会ったんだよね?」
「……うん」
月は違うけど、僕とかなえさんが出会ったのは、一年前の春の入学式の日だったっけ。
あの時は、恋人はおろか、友人関係にすらなれないと思っていた。
けど、この一年間で様々な出来事を体験したおかげで、こうして恋人同士にまで発展することが出来た。
最初は夢を見ているのではないかとも考えた。
けど、そうじゃなかったんだ。
これは夢じゃない……。
「私と健太君は……恋人同士なんだよ」
「……そうだね。僕達は紛れもなく恋人同士だ」
確認しあう僕達の目には、迷いの文字が見受けられなかった。
書かれているのは……『希望』。
未来に対する希望のみが、僕達の目に写っていた。
「……ソコノヒト、カップルカ?」
「「……え?」」
そんなことを考えていたら、僕達は見知らぬ外国人に声をかけられた。
何やら大きなクーラーボックスを肩からぶら下げて、清水の舞台を歩いていたらしい。
心なしか、汗も若干見ることが出来た。
「カップルナラ、コノミズカウトイイ。キットオタガイナガイキデキル」
「……一応聞きますけど、いくらですか?」
クーラーボックスの中から謎の緑色の液体の入ったペットボトルを見せつつ、外国人が僕達に迫ってくる。
僕が値段を聞いてみると、外国人は途端に嬉しそうな表情を見せて、
「イッポンセンエンニナルヨ!」
「「いりません」」
僕達の答えは、最初から決まっていた。
誰が一本千円の飲み物を好き好んで買うと言うのだろうか。
「ザンネンネ……コノナカニハビヤクモハイッテタノニ……」
「本当に何が入っているのさ!?」
危ない……この飲み物はかなり危険だ。
というか、この人自身がかなり危険だ。
だとすれば、僕達がとるべき行動はただ一つ……。
「……かなえさん」
「……健太君」
「「逃げるよ」」
(ダッ!)
僕達は全力でその場から走り去って行った。
「マ、マツネ!コノナカニハマダホカニモタクサンノゲキヤクガハイッテイテ、カップルノヨルノオツトメニモコウカテキ……」
後ろの方でかなり危ないことを言いながら外国人が追って来たが、僕達はなんとか振り払うことに成功したのだった。