0-2 Second piece
―――ん……。
「目が覚めたようだな」
あれ……ここは。
……そうだ、僕は愛と一緒に、デートをして、そして……。
「『あの世界』での早乙女愛の願いは叶った。よって、第一のカケラは、消滅したみたいだ」
『第一のカケラ』……。
そうか……僕は、ここにある『世界のカケラ』に込められた願いを叶える為に、カケラの中の世界に入りこんだんだっけ。
―――それじゃあ、愛の願いって言うのは。
「ふむ。恐らくは、木村健太とデートがしたかった、というものなのだろう……いや、もしくは、オリエンテーション旅行の時に告白がしたかった、というものなのかもしれぬな」
オリエンテーション旅行の時に告白がしたかった?
……そういえば、あの時愛は、確かに何かを僕に伝えようとしてたな。
……もしかしてあの時、愛は僕に告白をしようとしていたのだろうか?
「カケラの世界での出来事は、次のカケラの世界には継承されない。なぜなら、それぞれのカケラの世界は、独立した時間軸を持っているからだ」
―――独立した、時間軸?
「例えば……そうだな。まず、『早乙女愛』の世界のカケラの始まりの時は、いつだったか覚えておるか?」
確か……えっと。
―――九月の中旬、だったかな?
「そうであろうな。そして、そなたが元居た世界の時間は覚えておるか?」
……あれ?
なんだか結構矛盾しているような気がする。
『あの世界』での僕は一年生で、本当の僕は……すでに一年生の終業式を終えているから、実質僕は二年生になろうとしている。
……そうか。
あの時感じていた違和感と言うのは、これのことだったのか。
「このように、それぞれの抱える願いと言うのが違う故に、その世界が始まる時間というのも違ってくる」
―――そんな、ものなんだね。
「そのようだな。最も、例外がないこともないのだがな」
それぞれの願いが違うが故に、その願いによって、世界が始まる時間と言うのは違ってくる、か。
「して、そなたは次にどの世界に赴くのだ?」
……そう言えば次にどの世界に行くかとか考えてなかったな。
どの『世界のカケラ』に行ったとしても、僕がやるべきことは変わらない。
けど、その一つ一つには、みんなの願いが込められているんだ。
適当に選ぶことなんて出来やしないし、そんなことはしたくない。
……よし、これにしよう。
「ほう……『青水静香』の世界に行くのか」
静香さんの姿が映ったカケラを持った僕は、女性からの問いに答えるように、首を縦に振った。
「……そうか。ならば、そのカケラの世界に入るには、どうすればよいのか……分かっておるのだろう?」
―――前の通りにやればいいんだよね?
僕はそう尋ねる。
すると女性は、
「……その通りだ。では、やってみせよ」
言われて僕は、そのカケラを掴み、目を閉じる。
そして念じる。
……僕を、この世界に連れてってくれ。
瞬間。
―――うわっ!
相変わらず眩しい光が、僕の体を包み込む。
そして、僕の意識は、カケラの世界に吸い込まれて行った。
次回から青水静香編が始まります。