戯言を言う愚民たち《フレディside》
「おい愚民! 平民の分際でなぜ王宮に来ている! お前ら平民は泥にまみれて俺達の食糧を作っていればいいんだ! 次に来たら死刑だぞ!! さっさと帰れ!」
「でっでも……陛下、魔物が発生しまして……」
「魔物だと!? 我が国に現れたこともないゴミどもが現れるか! 戯言を吐くな!! いい加減帰れ!!」
この国の王である俺が何度言おうが帰らない、馬鹿な平民に痺れを切らし――思いっきり背中を蹴った。
そいつは、とぼとぼと帰って行く。
フン、平民の分際で何をしているんだ。
平民など、俺たちが生きるための台に過ぎない。
平民なんていつ偉くなったんだよ。
台風情が俺達にたてつこうなんて無理な話だ。
「フレディ様ぁ~!」
かわいらしい声を上げて俺のもとに寄ってきてくれたのは、花の髪飾りに花をあしらったドレスと――まるで花のようなフローレンスだった。
揺れる薄ピンクの髪がとてもきれいだな。
フン、やっぱりあのこげ茶の髪の地味な聖女とやらよりこちらのほうが良いな。
国が滅ぶとか変なことを言っていたのが気になるが――国から追放されたくない嘘だろう。
すると、フローレンスが、その大きいペリドットの瞳を少し縮めて、俺に聞いてきた。
「フレディ様、魔物が現れたと耳にしたのですが……大丈夫なのでしょうか?」
なんだそんなことか、と安堵する。
真剣みをおびた表情だったからな……婚約破棄とかだったらどうしようと思っていた。
まあ、フローレンスに限ってそのようなことするわけがない。
「ああ、大丈夫だ。魔物など現れていない。ただの愚民の戯言だからな」
フローレンスが、少し顔を歪めた。
俺が「愚民」というと、フローレンスはなぜかその美しい顔を歪めてしまう。
初めて会った時からだ。
だが良いんだ。
フローレンスは可憐で華やかで花のようで――美しいからな。
美しく、心がキレイなら良いんだ。