怪談「お守り」
このお話はとある兄妹のお話です。
この兄妹、兄は大学生で5つほど歳の離れてましたが、そこそこ仲の良い兄妹でした。
そんな妹が中学生の時、兄が妹に「ほら。コレやるよ。」っと、お守りをくれました。
妹は「え?なにこれ?何処かに行って来たの?」と兄に聞くと兄も「ん?まーな」っと答えさっさと隣の自分の部屋に戻っていきました。
妹は「変なの?ま。いっか」と、貰ったお守りを机の引き出しにしまいました。
その日の夜。
妹は妙な息苦しさに目が覚めてしまいました。「う~ん・・・なんか・・寝苦しいなぁ・・今何時だろう?」っと枕もとの目覚まし時計を見ようとしました。が、体が動かない。
「え?!なに?! え!?金縛り?!」っと思ったらなんだか右の方・・丁度机の方から妙な気配がする。
「え?!なに?!体が動かない!!え?!なんかいる!!?」そう思い何とか目だけを右の方に動かすと・・なにか白いモノがいる!
「うわ!!なんかいる!!怖い!助けて!!」そう恐怖しているとその白いモノがだんだん・・だんだんと、近づいてくる!
「ああ!助けて!お父さん!お母さん!お兄ちゃん!!」家族を呼ぼうと声を出そうとしますが、声にならない!その間もソレはだんだん近づき、とうとうベッドの真横!
とっさに見ちゃダメだと重いぎゅっと目を瞑ると心の中で「ごめんなさい!ごめんなさい!」っとわけも分からず必死に謝る! すると・・なんだか妙な気配が消えた・・・
「・・・・・・え?いなくなった??」っと思った次の瞬間!
ドスンッ!!
何かが自分の上に乗ってきた!!
「うわああああああああああ!!ごめんなさい!ごめんなさい!許して許してよ!おにいちゃ~ん!!!」そう叫ぶと同時に目が開いてしまって自分の上に乗ってるソレの正体を見た!それは・・・
暗い色の服を着た髪の長い女の人が凄い形相で自分の上に馬乗りで乗っている!
「ああああああああああああああああああああああ!!!」驚いて声が出るがその瞬間その女が自分の首を両手で絞めてくる!
「ぐぐぐううううう!!苦・・苦しい・・・たす・・たすけて・・・!!」その絞めてくる手を振り解きたいが体は一向に動かない!そして、もうだめだ!っと思ったところで
「妹!うるさい!何時だとおもってんだお前!!」
っと、隣の部屋の兄が部屋に入ってきた。
するとさっきまで乗っていた女の人がスッと居なくなって体が軽くなった。
あまりの恐怖と安堵に思わず泣き、さっきあった事を兄に伝えると兄が何となく気まずそうな顔をして視線が泳ぐ・・・
妹は直観的に何かを感じ兄に「なにか思い当たる事あるの?!」っと聞くと同時に(あ!あのお守り!そういえばあれ机の中だ・・・そういえばあの白い女の人も机の方から・・)っと思い当たり、「もしかして・・・あのお守り?」っと聞くと兄は観念したのかこう答えました。
「いやあwまさかそんなお守りだったとは・・・wいやあのお守りさ。辞めたサークルの女から渡されたんだけどさwwなんか気持ち悪いし・・かと言って捨てるのも悪いしさ・・だからオマエにやったんだよw」っと軽いノリで答えました。
「そんなもん私によこすな!!」っと怒り、机の引き出しを開けるとそこにあったお守りを兄に向かって投げつけました。
兄は「いやwすまんすまんw」っと謝り、落ちたお守りを拾うと「ちょっとその机かして」っと近づきおもむろにお守りの口を強引に開けて中身を出しました。するとそこには・・・
長い黒髪の束・強引に剥がされた生爪・白い紙に赤い血で書かれた兄の名前とその女の人らしき名前・・・
妹は背中がゾッとしたそうです。
兄曰く、その辞めたサークルの女性は後輩で、何故か兄の事を好きになったらしいのですが、それも人伝に兄が聞いたほど引っ込み思案で内面的な性格の女性。活発で明るい女性が好きな兄は「あ。パスで」っとあっさりその後輩を切って捨てたそうです。
その後その後輩は兄をあきらめた様でしたが実はそうではなく、偶然を装い兄の前に現れたり、兄のバイト先に毎日通ったりとストーカーの一歩手前まで進行したそうです。
改めてその後輩とにまじめに話し合い、「気がない事」と「後輩と先輩でしかない事」を初めに話し、「今後ストーカーまがいの事は止めてほしい事」と「俺はサークル辞めるが、それはお前の責任じゃなくほかにやりたい事が出来たから辞める事」を伝えて釘を刺し、「それさえ止めてくれれば今まで通りの仲の良い先輩後輩でいこうぜw」と譲歩案を出して納得してもらった。
との事でした。
そしてその話し合いの最後に「先輩・・・これあげます。」っと差し出されたのがそのお守りだったとの事です。
そう話してくれた兄に妹は、「やっぱそんなもん私によこすな!」っと怒ると同時に、(まあ、お兄ちゃんも大変だったんだね・・・てか、モテたんだね・・・意外・・)っと若干失礼な事を思ったそうです。
そして、そのお守りは中身ごと兄に返し「罪滅ぼしに今度何か美味しいもの買ってきて!」っと言って許したそうです。
中身ごとお守りを返され、中身を落とさないように片手でお守りを握ると兄は自分の部屋へと帰って行きました。が、その妹の部屋を出る際、部屋のドアを開けながら兄が手の中のお守りをしげしげと見ながら
「やっぱりろくでもないお守りだったかぁ・・・だってアイツ俺にコレ渡す時の手、薬指の爪無かったもんなあ・・・」っとボソッとつぶやいて部屋を出て行きました。
それを聞いていた妹は、
「やっぱりどんなお守りかわかってたんじゃん!!!」っと兄が消えていったドアへと枕を投げつけたそうです。